海外教育Navi 第72回
〜子どもをスマホ漬けにしないための心得〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.幼児と中学生の子どもがいます。スマホ漬けにしないために親ができることを教えてください。

前回のコラムでは、子どもの発育とスマホの影響についてご説明しました(前回記事へ)。今回は、スマホ漬けを防ぐポイントをご紹介します。

(6)なぜスマホ漬けになるのか

子どもたちはなぜ電子ゲームにはまるのでしょうか。そして、親はどうすればよいのでしょうか。以下のことを認識しておくことが重要でしょう。

電子ゲームは何度失敗しても認められ、叱られない
日々の生活には「禁止」と「規制」が多くあります。子どもは本来、失敗を重ねて成長していくものですが、学校でも家庭でも失敗しないように規制され、「あなたはダメ!」と叱られます。唯一、電子ゲームだけは何度失敗しても認められ、叱られません。やり直しがきき、新しい発見もあり、自分の力を存分に発揮できると思い込んでしまいがちです。

不安定な思春期、失敗が許されるゲームの世界は生きていくうえでの困難や辛さ等を癒やす場であり、同時に成功体験を味わえる場でもあるので子どもはゲームが好きなのです。かつては子どもだけの自由な遊びの世界がその役割を果たしていました。

子どもたちには電子ゲームのほかにも失敗が認められ達成感が味わえる現実の場が必要であり、そのような環境をつくることも大人の役目です。

「実生活のなかで夢中になれること」を
子どもといっしょに探して応援する

お子さんは何に興味を示していますか。仙台市のデータによると、成績が伸びていった子どもたちはポジティブで未来志向であることもわかっています。

彼らは自分の意思で勉強に取り組み、具体的な将来像を思い描き、夢や目標に向かって挑戦しています。一方で、未来が描けず悩んでいる子どもたちが多いことも事実です。

親や身近にいる大人が子どもに寄り添い、興味のあるものに取り組んでいくよう応援していきましょう。同性の親が自分の体験を話してあげるのもよいことです。

(7)スマホ漬けから抜け出すために

スマホに触らない時間をつくる
親から率先して取り組むこと。その間、身体を動かしたり本を読んだり、人と意見交換したりするようにしましょう。

家庭でルールを決める
①使い方のルールを決める(スマホの管理、利用時間、料金の範囲)。守れなければスマホを解約することを約束させておく。

②スマホの機能は必要最低限とし、フィルタリングサービス(不適切なサイトや有害アプリから使用者を守り、安全をサポート)を利用する。

③依存症にならないように利用の仕方を子どもに定期的に確認する。

(8)ネットトラブルに巻き込まれないようにするために

次のことに気をつけましょう。

①ネット上に写真・個人情報を載せない。
②ネット上で知り合いになった人をむやみに信用しない。
③迷惑メールやチェーンメール、知らない人からのものは削除。
④出会い系サイト、怪しいサイトには絶対アクセスしない。無料と書いてあるサイトでも高額料金が請求される場合があることも伝える。
⑤「ペアレンタルコントロール」機能の活用。

まとめ

便利なスマホですが、危険もいっぱいです。こんなことわざがあります。

「地獄への道は、善意で敷き詰められている」
“The road to hell is paved with good intentions.”

子どもたちが、この“善意”でできた罠に落ちないように、発達段階に応じて自らを厳しく律するよう話し合い、自己コントロール力、責任能力を教えることも親の役割ではないでしょうか。

今回の相談員

海外子女教育振興財団「渡航前配偶者講座」講師
小木曽 道子

ドイツとアメリカ・ロサンゼルスに合計10年間滞在。アメリカではふたりの娘を現地校に通わせ、現地校のボランティア活動に参加。地区教育委員会で2カ国語諮問委員会の議長を3年間務め、海外から転居してきた親子をサポート。帰国後、海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」の講師を務め、現在は「渡航前配偶者英語講座」のWEB講師および「外国語保持教室」のサポートスタッフを兼務しているほか、NPO法人「子どもとメディア」アドバイザー、「日本マチュピチュ協会」理事、カウンセラーとしても活動している。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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