【ニューヨーク不動産最前線】タックスリターンと不動産の深い関係

3月に入り、今年もまたタックスリターン(税務申告)のシーズンがやってきました。この時期になると、日常の業務に加えて書類の準備や会計士さんとのやり取りに追われ、少し憂鬱な気分になるという方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。不動産ブローカーは会社に所属していても個人事業主と同じような扱いになるため、経費の計算などタックスリターンに向けた準備が結構面倒なのです。

さて、今回はそんなタックスリターンの時期にちなんで、不動産を所有している場合の「固定資産税」と節税効果についてお話ししたいと思います。

ニューヨークで「アパートを借りるべきか、買うべきか」というのは、誰もが一度は考える永遠のテーマですが、購入の大きなメリットの一つが税金の控除です。持ち家(コンドミニアムやコープ、戸建て)の場合、支払った固定資産税やモーゲージ(住宅ローン)の金利部分が所得税の控除対象となります。何年払い続けても自分の資産にならない家賃と比べると、これは大きな違いですね。

ただし、固定資産税の控除については少し注意が必要です。2019年の法改正により、所得から控除できる金額の上限が10,000ドルに設定されてしまいました。マンハッタンの平均的な1ベッドルームのアパートでも、固定資産税は年間12,000ドル程度になることが多いため、全額を控除することは難しく、上限の10,000ドルまでが控除される形になります。

また、自己使用(メインの住居)として物件を所有している場合、一定の条件を満たせばニューヨーク市から固定資産税の割引(高齢者割引や自己使用割引など)を受けられる制度があります。ここで気をつけていただきたいのが、物件探しの際に広告に出ている固定資産税の金額です。売主がすでにこの割引を受けている場合、その割引後の金額が広告に載っていることがあります。もしあなたが投資目的で購入して賃貸に出す場合、この自己使用割引は適用されないため、実際に支払う税金は広告の額よりも高くなってしまいます。

一方で、投資用として物件を購入して賃貸に出す場合には、「減価償却」という強力な節税メリットがあります。アメリカでは住宅用不動産の場合、購入時の築年数に関わらず一律で27.5年かけて建物の価値を償却でき、毎年の所得から控除することができます。ニューヨーク(特にマンハッタン)は物件価格も維持費も高いため、家賃収入だけで大きな利回りを出すのは難しいのが現実ですが、この減価償却による節税効果を狙って投資をする方はとても多いのです。

物件を購入する際、毎月の「コモンチャージ(管理費)」と「固定資産税」を合わせた維持費がいくらになるかは、購入後の生活を左右するとても重要なファクターです。いくら物件の価格が安くても、維持費が高ければ良い買い物とは言えません。

税金のこととなると少し難しく感じてしまうかもしれませんが、本音を言えば、難しいことをあれこれ考えるよりも気に入った家を買って楽しく暮らし、それが結果的に節税にもつながっていた、というのが理想的ですね。

(※税控除や減価償却のルールは、個人の状況によって異なります。詳細や実際の税務申告については、必ず専門家にご相談ください)

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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