企業各社、クラウド導入にまだ消極的 〜最大懸念はセキュリティにあらず

 業務用ソフトウェア大手が企業各社に対しクラウド電算環境への移行を積極的に促す一方で、企業の多くはクラウド・サービスの採用をまだためらっている。

 その背景には、以前から言われるセキュリティ懸念というより、システム移行による不具合が業務を滞らせるという懸念のほうが深刻という新たな認識がある。コンピュウェア(Compuware)とリサーチ・イン・アクションが調査結果を報告した。

 インベスターズ・ビジネス・デイリー紙に掲載された両社の調査報告によると、世界的企業468社の管理職を対象に、クラウド電算に関する三つの懸念事項を調べたところ、最大の懸念は、回答者の80%が挙げた「見えないコスト」という結果になった。

 「見えないコスト」とは、現場実装型の従来の電算環境をクラウド環境に移行する際に、予想外のシステム障害発生の解決にかかる費用や業務の遅延、それらによって引き起こされる顧客喪失といったコストを指す。

 その次に多かったのは、システムの性能や機能に何らかの支障が起きることで末端利用者に悪影響がおよぶという懸念で、それを挙げた回答者は64%だった。

 3番目は、システムの性能低下によるブランド力や顧客の忠誠心が減退する恐れで、51%がそれを挙げた。

 4番目は、クラウド・システムの問題発生が減収を引き起こす可能性で、それを挙げた割合は43.5%だった。

 セキュリティは、上位に入る懸念事項と予想されたが、同調査では8位だった。コンピュウェアの技術戦略担当スティーブン・ピアシャーラ氏はそれについて、「2年前ならセキュリティが懸念事項のトップだった」「現在では、パフォーマンスや使い勝手に重点が置かれるようになった」と話す。

 一方、調査会社ガートナーによると、業務用ソフトウェア市場におけるクラウド電算ソフトウェアが占める割合は、2013年の43%から2016年には56%に達すると予想される。

 ガートナーによると、2013年における業務用ソフトウェアの販売高は3030億ドルで、2016年には3700億ドルに達する見込みだ。

 ピアシャーラ氏はまた、パブリック・クラウド電算への全面移行を避けてプライベートやハイブリッドを採用する傾向が昨今強まっていると指摘。クラウド電算環境の利点を取り込みながらも、電算システムの中核部分を自社内で制御したいという考えが各社に根強くあることを反映している。

 今回の調査では、クラウド・サービス導入がIT投資の優先事項であるという企業が12%を占めたことも判明。一般に予想される割合より低い数値と言える。それと同時に、長期的にはクラウド関連が最重要のIT投資分野になる、と答えた割合は16.5%だった。

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