大規模データで花粉症薬供給網を最適化 〜 品不足による売り上げ喪失を回避
- 2015年5月27日
- ハイテク情報
2015年の4月と5月は、ニューヨークにおける花粉の飛散量が過去3年間の同月平均比で25%増えたため、花粉アレルギー症の人たちにとっては辛い春になっている。
しかし、米北東部の各薬局は今年、アレルギー薬の需要急増で売れ切れを続出させた2010年とは違って、商品在庫の効率的維持管理に成功した。その背景には大規模データ(big data)を活用した供給網最適化がある。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、製薬各社や薬局各社は今年、複数社の何千店からのデータを統合して、それらを天気や花粉、そのほかのデータと照合し、どの地域でどれくらいの需要があるかを予想することで、売れ切れ状態にならないよう供給量を最適化している。
マーケティング会社オーケストロ(Orchestro、バージニア州マクリーン拠点)のアニュージ・アグラワル副社長によると、「一般に小売売上高の6〜10%は売れ切れによって喪失する」。
オーケストロは、科学者たちの専門班を編成し、大規模データを解析して将来の需要を予想するサービスを大企業向けに提供している。同社が企業向けに提供しているウェブ基盤ソフトウェアでは、顧客企業がデータ報告の閲覧やデータ解析、あるいはデータのカスタマイズを可能にする機能を毎日提供している。
「データを集めて整理し、そこから洞察できる傾向や現象、または各種の数値を報告書として顧客企業に提示できるようにするには、以前なら1週間かかっていた」とアグラワル氏は話す。「在庫切れになっている状態を1週間後に知るようでは、商売は終わっている」。
代表的な花粉症薬のクラリティンを供給するバイエル(Bayer)は、季節的動向をいち早く察知するために、データ解析を以前から活用している。
バイエルの米アレルギー薬部門担当副社長マイク・デバヤシー氏は、第三者開発のソフトウェアを使って、花粉季の6〜9ヵ月前に需要を予想して供給網の準備を進める、と説明。同ソフトウェアは、アレルギーと天気の傾向をモデル化し、温暖化情報も解析することで、半年後の花粉症発症の度合いを予想する。
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