IBM、モバイル市場を本格攻略へ

 IBMは、モバイル市場に本格進出する戦略を打ち出した。

 同社は、顧客企業を対象に、モバイル・ショッピングの戦略策定をはじめ、モバイル・アプリケーションの開発、モバイル・データの分析、モバイル資産の管理といった支援サービスを提供する計画だ。

 ニューヨーク・タイムズによると、IBMでは、数千人という社員にモバイル技術の研修をすでに施し、また、今後数年間に数百万ドルを投じてモバイル分野の研究開発と買収を進め、さらにAT&Tとの提携を通して、AT&Tのクラウド・サービス経由でソフトウェア開発者がモバイル・アプリケーションにアクセスできるようにする。

 同社のモバイル戦略責任者を務めるマイケル・リーゲル氏によると、IBMはモバイル分野ですでに10社を買収したほか、世界各地に計160人のモバイル専門班を編成して研究開発を強化している。同社はモバイル関連の特許を2012年だけで125件取得した。

 IBMは元来、コンピュータのハードウェアを専門としてきたが、現在、同社の事業は、ソフトウェア開発に代表される付加価値の高いITサービスが中心だ。

 スーパーコンピュータのような製品でさえ、周辺サービスやソフトウェアのライセンス契約と抱き合わせで販売されることが多い。

 ITサービスとコンサルティングを主体とした事業モデルではこれまでに、電子商取引やデータ分析、セキュリティの分野を開拓してきた。

 IBMが得意とするのは、大企業顧客への売り込みだ。グーグル(Google)やアマゾン(Amazon.com)といった歴史の浅い競合社は、比較的規模の小さい企業に対して分析サービスやクラウド電算を売り込み、大量販売で成功を収めてきた。

 IBMによるモバイル市場進出は、顧客企業がモバイル技術でもIBMの十八番である大規模な取り組みを望むかどうかを試すことになる。

 また、IBMがモバイル市場に本格参入したことは、多くの企業で社員や顧客がモバイル機器を使って様々な場所からデータにアクセスしている実態を反映したものと言える。モバイル機器を介したクラウド技術へのアクセス増加とも相まって、企業が発想の転換を迫られている現実を浮き彫りにしているとも言える。

 IBMのモバイル戦略は、2012年1月に最高経営責任者に就任したバージニア・ロメッティ氏の下での初の大型戦略となる。

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