グーグルやマイクロソフトの幹部らは最近、石油業界大手らと接触している。データ活用による効率化やコスト削減の契約を獲得するためだ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、技術業界と石油業界の関係は現在、数年前の技術業界と自動車業界に似た部分がある。石油業界は、技術業界が潜在的な競合社になることに脅威を感じていることから、技術業界では、その懸念払拭に努めながら売り込んでいる。
▽「変革の触媒」になるか「変革の犠牲」になるか
グーグル(Google)の一人の幹部は先日、ヒューストンの石油大手を訪れ、グーグルが石油会社よりもうまくデータ管理できると明言した。
白いジーンズに紺のTシャツを着たダリル・ウィリス氏は、スーツに身を包んだ石油大手幹部らを前に、デジタル経済時代において、石油&ガス業界大手らによるデータ活用がわずか5%しかなく、業務効率化による巨額のコスト削減機会を逃している、と売り込んだ。
「石油&ガス業界は、デジタル・データ活用技術による変革の触媒になるか、変革の犠牲になるかのどちらかの未来に直面している」と同氏は、GE傘下のベイカー・ヒューズ(Baker Hughes)の幹部らに力説した。
▽あいつぐ巨額契約
昨今、シリコン・バレーの技術大手らはヒューストンを頻繁に訪れている。石油&ガス業界の大手らの現場に、クラウド電算基盤の人工知能技術を売り込むためだ。
最近では、シェブロン(Chevron)やイクイノア(Equinor)、トタル(Total)、レプソール(Repsol)といった石油&ガス大手らが、グーグルやマイクロソフト(Microsoft)と10億ドル単位の巨額契約をあいついで結んでいる。石油&ガス業界は巨大であることから複数年契約は巨額となり、技術大手らにとっては利益率の高い事業となる。
▽次なるデトロイトになるヒューストン
ただ、シリコン・バレーと石油&ガス業界の関係はやや複雑だ。石油&ガス大手らは、シリコン・バレーの専門技術を必要としながらも、技術大手らが将来に競争相手になるのではないかと懸念している。
自動車製造大手らも数年前まではシリコン・バレーと競合することを予想していなかったが、現在、シリコン・バレーとデトロイトは次世代自動車の開発において、提携しながらも競合関係にある。それと同じことがヒューストンにも起こるというのが、石油&ガス大手らの危惧するところだ。競合社になるかもしれない技術大手らにデータを持たれることを歓迎する石油&ガス大手はいない。
▽いまのところは懸念よりも利点を優先
エネルギー業界の多くの会社は、クラウド電算サービスや人工知能を何年も前からすでに使っているが、最近では特に、さらなる近代化を図るために最新の先進技術の活用を積極化させている。機械学習技術による膨大な量のデータの解析をクラウド・サービスとして活用し、探査や採掘、稼働、予想分析、予想保守、各種の管理を大幅に効率化かつコスト削減しなければ競争に負ける危険性が大きくなる。
したがって、エネルギー業界は現時点において、それらの大きな利点を優先し、潜在的競合社にデータを集められることへの懸念を抑え込んでいるかっこうだ。
▽BPからグーグルに転身
ウィリス氏は、グーグルが新設したばかりの法人向け人工知能サービス事業部門の幹部として、石油&ガス大手への売り込みに注力しているところだ。
筋金入りのシリコン・バレー技術者のような服装の同氏は、少し前まで英石油大手BPに30年間も勤務した石油&ガス業界専門家だ。エネルギー業界への売り込みを強化したいグーグルにとって最適の人材といえる。
▽協力関係を強調するグーグルとマイクロソフト
ウィリス氏は、グーグルでの面接の際、「冷暖房や移動(車)、照明がエネルギー業界の関心事だ」と明言し、石油&ガス大手らが、シリコン・バレーを警戒するより最終的には提携相手としてみるようしむけることが「技術大手の戦略であるべきだ」と話した。同氏の考えは、マイクロソフトでアジュール(Azure)事業担当上席副社長を務めるジェイソン・ザンダー氏の見方と同じだ。ザンダー氏も、エネルギー業界の警戒心をなくすことが契約獲得のカギだと指摘する。
「われわれの事業は小売でもなくエネルギーでもないというのが、われわれを警戒する各業界へのメッセージだ」(技術という本業以外の業界に進出する考えはない)とザンダー氏は述べた。
【https://www.wsj.com/articles/silicon-valley-courts-a-wary-oil-patch-1532424600】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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