自動車の運転支援機能を表す新しい用語が増え、消費者を混乱させている。
■緊急ブレーキだけで40種類
オートモーティブ・ニュースによると、自動車メーカーは「パイロット」「オートパイロット」「プロパイロット」「パイロットアシスト」「コパイロット 360」「ハイウェイ・パイロット」といった多くの呼び方で車の新しい運転支援機能を宣伝している。しかし、こうした新しい用語の乱発がドライバーを混乱させ、システムの機能や制限に関する誤解を生んでいる。
米国自動車協会(AAA)の最新調査によると、米国人の40%が「オートパイロットやプロパイロットといったシステムは自動運転機能を持つ」と考えているが、AAAの自動車工学および業界関係担当ディレクター、グレッグ・ブラノン氏は 「実際の運転には『パイロット』でなく、まだ人間が関与している」と指摘する。
AAAは、消費者がこうした技術の機能を明確に理解できるよう、安全機関、政策立案者、自動車会社が協力して用語を統一する必要があると提案している。ブラノン氏は「調査と試験を通してこの問題はかなり前から認識していた。AAAのエンジニアでさえ、テストする車のオーナーズマニュアルや資料を読み込まなければならず、車にどんな機能があるのか見極めるのは難しい」という。
AAAのエンジニア・チームが、国内で車を販売する34ブランドを対象に先進運転支援システム(ADAS)の宣伝で使われている独自の呼称を調べたところ、自動緊急ブレーキは40種類、適応走行制御(ACC)は20種類、車線維持支援システムは19種類の異なる用語が使われていた。
■緊急な課題
自動車業界も、自動運転や運転支援システムに関する消費者教育の必要性は認識している。1月にラスベガスで開催された先進技術の見本市CESでは、自動車メーカー、自動車安全の活動家、保険会社、シンクタンク、学術機関などの有志連合が、消費者や政策立案者のためにさまざまな新技術の潜在的利点を詳しく説明するための団体「Partners for Automated Vehicle Education(PAVE=自動運転車教育のための仲間)」を立ち上げている。
運転支援システムはすでに走行中の車で使われており、AAAの調査報告書は、用語統一の問題の緊急性を強調するとともに、業界が用語統一に合意することで今の教育不足を埋めるのに大いに役立つ可能性があることを示している。AAAは、システムの機能に基づいた単純で分かりやすい定義を用いてそれぞれのADAS機能を説明するよう提案している。
また、設定された機能の範囲を超えて意図的に運転支援システムを誤用するドライバーと、システムの機能を誤解しているドライバーを区別する必要がある。ブラノン氏によると、後者が引き起こす安全上の問題が増えている。「これは業界ぐるみでないと解決が難しい問題だ。少なくともこれらのシステムを何と呼ぶのか、共通の認識から始める必要がある。メーカーが宣伝した呼び方を使ってはいけないと言っている訳ではないが、その機能の表現には共通性が必要で、消費者の教育と理解に向けた第一歩は共通の用語だ」 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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