従業員を監視する企業が増加 〜 ソフトウェアやGPSで働きぶりを追跡

 外回りの社員や時給労働者の動きを追跡するために携帯機器やソフトウェアを使って勤務状況を監視する企業が増えている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、バージニアの害虫駆除会社アキュリッド・ペスト・ソリューションズは、サービスに出る外勤担当者が仕事時間を私用に使いすぎていると感じたため、外勤に支給している18台のスマートフォンのうち5台にGPS追跡ソフトウェアを実装したところ、勤務時間中に愛人宅を訪れている社員や、仕事をサボっている社員が見つかったことから解雇した。

 最近では安価な追跡ソフトウェアの登場によって、会社は社員の居場所だけでなく、電話の盗聴をはじめ、運転手によるシートベルト装着の確認、あおり運転の阻止もできるようになっている。

 事務職の場合、コンピュータ使用状況を監視されている可能性が以前から想定されたが、時給労働者や外勤の監視は長年、休憩室のビデオカメラや社用車のGPS程度にとどまっていた。

 調査会社アバディーン・グループが公表した2012年の調査報告によると、外勤を雇っている会社の37%が携帯機器や車載GPS機器を使って外勤の現在地を追跡している。

 そういったハイテク監視をプライバシー侵害だと感じる労働者もいるが、雇用主は職場の安全性や生産性を高め、窃盗を抑制し、企業秘密を守り、嫌がらせや差別苦情の調査もできると反論。

 2013年の学術的研究では、392店のレストランでNCRの窃盗監視ソフトウェアを導入し、従業員にその旨を通達したところ、給仕による窃盗が22%減り、飲料売り上げが10%増加した。

 同ソフトウェアは、給仕が売り上げ金を着服する時によく使う手段である注文取り消しを防止すると同時に、給仕の働きぶりも向上させる結果につながった。

 従業員追跡および監視技術の利用は法的にほとんど規制されておらず、裁判所も職場における社員のプライバシー権をほとんど認めていない。

 連邦法では、雇用主によるGPS利用を制限しておらず、利用事実の開示も義務付けていない。州法でも、社員による通信を監視していることを社員に通達するよう雇用主に義務づけているのは、デラウェアとコネチカットの2州だけ。

 労働者のプライバシー保護を擁護するナショナル・ワークライツ研究所の ルイス・モルトバイ氏は、「監視すべきかどうかが争点ではなく、そのやり方だ」と主張し、監視していることを従業員に説明し、不正疑いのある社員の監視に関し正当な手順を規定するよう助言している。

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