「卑弥呼の鏡」は魔鏡 太陽光を反射、文様浮かぶ

 【共同】「卑弥呼の鏡」と呼ばれる三角縁神獣鏡が、鏡面に太陽光を当て壁に反射させると、裏面の文様を映し出す「魔鏡」だったことが分かり、京都国立博物館の村上隆学芸部長(歴史材料科学)が29日、発表した。愛知県犬山市の東之宮古墳(3世紀後半)で出土した三角縁鏡を基に、3Dプリンターを使って精巧なレプリカを作って実験した。魔鏡は中国では紀元前からあるが、日本でしか出土しない三角縁鏡で確認されるのは初めて。

 三角縁鏡は裏面に道教の神仙思想に基づく神獣像を表現。倭国の女王卑弥呼が中国・魏から与えられた「銅鏡百枚」とする説があり、各地に配布されたとみられている。これまで中国との政治的な結びつきを示す遺物として主に文様や銘文が研究されていたが、当時の支配者が人心掌握するための呪術具として使っていた可能性も出てきた。

 村上部長は東之宮古墳で出土した三角縁鏡を含む青銅鏡11面を2009年に3次元計測。11年、3Dプリンターを使い、レーザーで溶かした金属粉を20〜30マイクロメートル単位で積み上げて、「三角縁唐草文帯二神二獣鏡」(直径約21センチ)「三角縁唐草文帯三神二獣鏡」(同約23センチ)の2枚を復元した。鏡面を磨き、太陽光を反射させたところ、縁の部分などが同心円状に浮かび上がった。実物には、さびがある上、重要文化財で磨くことができないため、実験はできない。

■鏡論争に新展開 卑弥呼の鏡は魔鏡

 最先端の3Dプリンター技術が「卑弥呼の鏡」論争に新たな視点を切り開いた。レーザーでくまなく計測し、形や大きさ、金属の組成まで実物そっくりに復元。研究者が誰も予想しなかった三角縁神獣鏡の「魔鏡現象」を実証した。

 三角縁神獣鏡は、レプリカ作りが難しい遺物として有名だ。縁などの厚い部分と薄い部分の差が大きく、鋳型の中で金属が冷えて縮むスピードが異なり、変形しやすいからだ。このため京都国立博物館は鋳型を使わず、金属粉を少しずつ積み重ねる新しい立体形成法を採用した。

 不思議なのは、これほど鋳造が困難で壊れやすい鏡を500枚以上も作り続けたことだが、魔鏡現象という視点でこれらのマイナス点を見直すと、全てが利点に変わる。鏡面に太陽の光を当てると、分厚い三角縁はひときわ明るい光の輪となり、厚みの差で映像に美しいコントラストがつく。

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