サウスウェスタン、天然ガスに固執 〜 値崩れしても生産続行するCEOの信念

 天然ガス増産にともなう値下がりを受けて、エネルギー各社が新規のシェール(けつ岩層)掘削計画を見直すなか、天然ガス生産量米国4位のサウスウェスタン・エネルギー(テキサス州)は、「うち1社になってもやめない」と天然ガス生産の規模拡大を続けている。

 その唯一の理由は、「将来、天然ガス需要は必ず高まる」というスティーブン・ミュラー最高経営責任者(CEO)の信念だ。

 数年前には、田舎道を走るトラックが切れ目なしに土ぼこりを立てていたアーカンソー州の大型ガス鉱区ファイエット・シェールは現在、ほとんどの天然ガス採掘会社がリグ(井戸掘削装置)の運転を中止したために静まり返っている。しかし。サウスウェスタンだけは、所有13基のうち12基を動かし続けている。

 サウスウェスタンはファイエットを10年前に発見。同シェールの土地貸借料が格段に安かったこともあって、サウスウェスタンは金銭的にも力を付けた。2007年以降、ファイエットでの同社のガス生産量は9倍に、可採埋蔵量は5.7倍に増え、同社はいまも月に30本の新しい井戸を掘っている。

 ミュラーは、「石油かガスかどっちが得か考えて、ほとんどの会社はうちを変人扱いしているが、だれもついて来なくても自分だけはガスを掘る」と11月に公言している。

 ここ数週間、天然ガス価格は原油と同様に下がっており、同社の社員以外、ミュラー氏に従う者はほとんどいない。かつてファイエットで計45基のリグを動かしていたチェサピーク・エネルギーやBHPビリトン、エクソンモービル傘下XTOエネルギーといった業界大手は、天然ガス価格が当時の半値以下に下がった現在、すべての運転を中止している。

 クリーン燃料としての天然ガスへの期待が高まり、増産に向けて多額の設備投資が行われた後、全米にあふれるほどの天然ガスが生産されたが、それを運ぶのに十分なパイプラインはついに建設されなかった。アーカンソーのほかテキサスやルイジアナの天然ガス関連投資計画は、毎年次から次へと中止または縮小された。

 しかし、サウスウェスタンだけは天然ガスへの強い期待を捨てていない。それどころかミュラーCEOは10月に、ウェスト・バージニアとペンシルベニアのマーセラスとユティカの両シェールでチェサピークがかつて所有した区域への設備投資を倍増し、54億ドルで41万3000エイカーを新たに開発する計画を発表した。

 そのため同社の負債は大きく膨らみ、ウォール街のアナリストらも懸念を示したが、ミュラー氏は先日、ペンシルベニアのガス井の権益を購入した。

 オッペンハイマーのファデル・ガイト氏は、「ミュラー氏にはわれわれが間違いだと証明してもらいたいが、彼は桁外れに頑固な男だ」「ガスが石油と同じくらいもうかるという夢が証明されるころには、彼は引退しているかもしれない」と話した。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る