トイレにまで広がる企業のモバイル戦略 〜 今後は機器よりサービスが主体に

 企業のモバイル戦略が、トイレの便器からの情報取得にまで広がりつつある。

 インフォメーション・ウィーク誌によると、ラスベガスで先日開かれた業界催事「インターオプ(Interop)」でパネル・ディスカッションに登壇したヒューレット・パッカード(HP)のドミニク・ウィルド製品管理担当福社長は、オランダの銀行ラボバンク(Rabobank)の導入事例を披露した。

 ラボバンクがHPに依頼した内容は、便器の水が流される回数を調査して水道使用量を把握したうえで、清掃用の化学品の量を最低限に抑えるというものだ。

 モバイル戦略という場合、その対象はいまやスマートフォンやタブレットだけではなくなりつつある。モノのインターネット(IoT=Internet of Things)の範疇に収まる技術も包含するようになっている。

 オンライン・アパレル販売大手ギルト・グループ(Gilt Groupe)のエバン・マロニー主任技術者は、これまでのモバイルの定義では、アマゾンの「ダッシュ」ボタンのようなものが含まれなかったが、技術進歩を受けてそれらが含まれるようになっている、と指摘する。

 アマゾンのダッシュ・ボタンとは、さまざまの場所に設置できる物理的なボタンで、それを押すと製品をオンライン注文できる。

 モバイル機能に関する今後の定義は、機器主体ではなくサービス主体に変わっていく、とマロニー氏は指摘する。

 また、スマートフォンは、クラウド・サービスの遠隔操作機のような存在になっていくとみられる。ホテル・チェーン大手ラ・キンタ・イン&スイーツのビベク・シャイバ最高情報責任者(CIO)は、「当社にとってのモバイル戦略とは、親指一つで予約できるようにすることだ」と話す。

 モバイル戦略の目的は物事を簡便化することだが、その過程は必ずしも単純ではない。まずはバックエンドから始めることが重要だ、とシャイバ氏は考える。「会社のシステムをクラウドに移し、API(application programming interface)を開示すること。それによって旧型システムから解放される」。

 また、投資の見返りがあるかどうかも厳しい目で見ていく必要がある。シャイバ氏の場合は、たとえば8万室の客室すべてにスマート施錠システムを導入するのは、簡単に飲み込める経費ではない。

 IoT関連のプロジェクトを進めるに際しては、社内政治も課題になりえる、とHPのウィルド氏は話す。「IoTのプロジェクトは大抵の場合、施設管理部門が主導しているが、IT部門はその準備ができていないこともある。そのため、組織的な問題になることもある」。

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