弁護士
木村 原

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「アメリカで生活していくための手伝い 移民法弁護士にやりがいと手応え」

 1995年、日本から渡米してきました。高校からアメリカに留学していた友達に、大学のパンフレットを送ってもらったことがきっかけで、自分もアメリカの大学に行くのだと決めていたのです。

 インディアナ州の大学に通っていた3年の時、留学生オフィスの掲示板で、ある弁護士事務所で日本語ができる人を探していると知りました。クライアントの日本人が亡くなったために、日本語の書類を読んだり、日本の親戚とやりとりしたりするため日本語が必要だということで、私がそこでインターンをすることになりました。手伝っているうちに「アメリカで生活していくためのサポートができる」移民法弁護士の仕事に魅力を感じ始めました。

 その後インディアナ大学インディアナポリス校のロースクールに3年通い、司法試験を受けて、2008年、初回で合格しました。アメリカではロースクール卒業生の7割が試験に合格すると言われています。ですから、逆に職を得ることが非常に難しいのが現状です。私は合格とほぼ同時に、妻の就職が決まったために、一緒にインディアナからヒューストンに引っ越し、6名の弁護士が所属する事務所に入所することができました。

 最初の1、2年は右も左もわからずに本当に大変でした。何が大変かというと、「絶対に失敗できない」というプレッシャーです。既にアメリカに投資をしているお客さんのビザの申請や更新を失敗してしまったら、アメリカに住めなくなってしまいます。ですから、条件的に困難なクライアントには、ケースを始める前に十分なリサーチをした上で、あらかじめリスクをよく説明して、どのような結果が考えられるかも理解してもらってから取り組むことが重要です。その姿勢は今でも変わりません。

 「この仕事でやっていこう」と手応えを感じられるようになったのは、3年目くらいに、私に担当してほしいという指名を得られるようになった時です。とにかく、この仕事は経験を積むことが重要です。こう言っては語弊があるかもしれませんが、ロースクールで学んだことは実地ではそれほど役に立ちません。

 その後、自分の事務所を開いて独立しました。もっと自分の責任で飛躍したかったからです。所属するいち弁護士という立場だと、やりたいと思った仕事でも所長の決断を覆してまで挑戦することはできません。そこで自分でできるという自信がついた段階で、独立を決行しました。

供給過多のアメリカ 厳しい弁護士業界

 独立してからの一番の違いは、お客さんに自分の判断で時間をかけることができるようになったということです。雇われている立場だと事務所のポリシーに従う必要があり、特定のケースに時間をかけることが難しい場合もあります。

 この仕事に向いている人は新しいことを調べるのが好きな人です。法律は頻繁に変わります。しかも180度変わることも珍しくありません。その更新された情報を常に追いかけていなければいけません。次に期限を守れることも必要条件です。クライアントの期限もあるし、申請の期限もあります。きっちりとそれを意識して取り組める人でなければ務まりません。

 顧客獲得の工夫というのは、とにかく個々のケースにベストを尽くす、ということです。ベストを尽くし、いい結果が出れば、クライアントは新しいクライアントを連れて来てくれます。「この弁護士はいい」という太鼓判を押してくれるのです。

 最近も、こちらで研究職に就いている人のグリーンカードを短期間で取得できて、大変喜ばれました。通常、13カ月かかるだろうと言われていたのですが、何と4カ月ほどでおりたのです。本人も「早く取りたい」と言っていたので、役に立てて、本当に良かったです。

 私の仕事は家族や仕事を通しての永住権の申請や各種ビザの申請です。移民法は連邦法なので、クライアントも地元のテキサスだけでなく、全米に広がっています。遠くはハワイやニューヨーク、ロサンゼルス、さらに日本や中近東まで担当しています。顧客の比率は日本人が1に対して非日本人が9です。

 これから弁護士をめざす人にアドバイスするとしたら、「既にアメリカでは弁護士の供給が需要を上回っているので覚悟が必要」ということですね。多くの学生はローンを組んでロースクールに通います。卒業後には、その借金を返済していかなければならない。弁護士のキャリアにこだわるよりも、実は畑違いの仕事の方がいい給料をもらえることもあります。つまり、借金返済か、キャリア追求かという選択を迫られることになるのです。

 リーマンショック以降、企業がコスト削減目的であまり弁護士を使わなくなっている、アウトソーシングをインドなどの海外企業に任せるようになっているなどの状況もあり、非常に厳しい業界だと言えます。

 それでも私自身は挑戦を続けて、できれば、ニューヨークやロサンゼルス、フロリダなど全米各地にオフィスを広げたいと思っています。それが10年後の目標です。

kimura-san

My Resume
●氏名:木村原(Gen Kimura)
●現職:弁護士(木村法律事務所所長)
●前職:弁護士事務所の所属弁護士
●取得した資格:Attorney at Law (State of Texas)
●ビジネス拠点:テキサス州ヒューストン
●その他:モットーは「最後まで諦めない」。
●ウェブサイトなど:www.thegklaw.com

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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