シリーズアメリカ再発見⑩ サウスダコタ
国立公園とバッファロー大平原をゆく

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

乗馬やハイキングのトレイルが多く、夏場は車が連なるスピアフィッシュキャニオンPhoto © Mirei Sato

乗馬やハイキングのトレイルが多く、夏場は車が連なるスピアフィッシュキャニオン
Photo © Mirei Sato

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Day 2

 目覚めると、濃い霧が街を覆っていた。早起きして90号を北西に向かい、ワイオミングとの州境を越えたところにあるデビルズタワー国定公園まで行く予定だった。
 平らな大地にこつ然と、高さ1267フィートの岩が垂直に立っている不思議な場所だ。岩には無数の縦線が入っている。ラコタの伝説では、クマに追いかけられた少女がすんでのところで岩によじのぼると、岩が伸びて山になり、クマがすがりつこうと爪を立てた跡が刻まれてこんな形になったのだという。

 「この霧では危ないし、ワイオミングまで行っても何も見えないよ」。ホテルの従業員がそう諭すのであきらめた。

 ラピッドシティーで博物館をのぞき、ブラックヒルズの地形や歴史を学ぶ。地元で人気のダイナーで早めのランチをとり、バッファロー・バーガーを食べているうちに霧が晴れた。

 90号をスピアフィッシュキャニオンへ向かう。途中にあるスタージスの街は「バイカー」の聖地。毎年8月に行われるラリーには、世界中から走り屋たちがハーレー・ダビッドソンに乗ってやってくる。

スタージスの街にあるモーターサイクル博物館Photo © Mirei Sato

スタージスの街にあるモーターサイクル博物館
Photo © Mirei Sato

 スタージスから西へ折れた14号「スピアフィッシュキャニオン・シーニック・バイウェイ」は、バイカーならずともバイクで走りたくなる山道だ。約20マイルに渡ってツイストしながら峡谷を抜けていく。
 ピンク、茶色、グレーのライムストーンが数千フィートの高さに積み重なり、ポンデローサの松やアスペンの木々が生い茂る。合間をぬって小川がきらきら光って流れ、ところどころに滝も見える。ここはアラスカ以南で最高のマス釣り場の一つだ。

 日がとっぷり暮れる頃、デッドウッドに着いた。19世紀末、アメリカ最後のゴールドラッシュに沸いた鉱山の街で、伝説のガンマンとして映画にもなったカラミティ・ジェーンやワイルド・ビル・ヒコックも足跡を残した。今は、西部劇風の街並をいかして、80以上のカジノがひしめく観光地になっている。

 ヒコックが殺されたという曰くつきのサロンでディナーをとる。「バッファロー・ソーセージのラビオリ、ブラウンバター・ソース添え」というメニューに心惹かれたが、「狩猟が解禁になった今しか食べられないから」とキジ肉のクリームパスタを強くすすめられ、それにした。

 チキンとはまったく違うやわらかさと野生的な味で美味しかったが、「バッファローのラビオリは一体どんな味だったんだろう」と寝付くまでそればかり考えていた。
 限られた時間で旅をしていると、胃袋が幾つもあったらいいのに、といつも思う。

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