ネイルアーティスト&インストラクター
田畑 有香
文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)
- 2013年9月20日
高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。
「日々研究を重ね、顧客満足を追求 この仕事にゴールはない」
思えば、子供の頃から親には「手に職をつけるように」と言われて育ちました。実家もそうですし、親戚も自営業ばかりでした。周囲にサラリーマンがいなかった環境も今の仕事に影響しているかもしれないですね。
この仕事に巡り合うまでは日本の三重県で化粧品の販売や、宅急便会社で力仕事も経験しました。その頃から友達にネイルを施してあげるのが好きで、私にとっては趣味でした。この仕事に就けたらいいなあ、という漠然とした希望を実現させるために、まずはハワイのネイルスクール(ネイルアーティストの養成学校)に留学しました。1年ほどそこで勉強しましたが、やればやるほど「自分が好きなのはこれだ」という思いが強くなりました。最終的にハワイ州のライセンスを取得し、その後、転居したカリフォルニアでこちらのライセンスに変更して、現在のOCNBで働き始めました。その頃には結婚して就労ビザも獲得していました。
趣味を仕事にしてみての最初の壁は、お客様の好みは、百人いれば百通りあるということを知ったことでしょうか。お客様の好みを把握するために、どのようなデザインにするかカウンセリングを行うのですが、そこでしっかりと要望を理解することが最初の頃は大変に感じたこともありました。
また、イベントに参加してネイルバー(ネイルアートのブース)を出展する際には、何十通りものデザインを事前に準備しなければなりません。今の時代の空気を敏感に感じ取って、それを爪の上に表現することが必要です。研究のため、読む雑誌はネイルアートの専門誌だけです。オフの日はデパートの中を歩き回って、トレンドを吸収することに努めます。ショーケースから、これから「くる」色やデザインが伝わってきます。さらに新しいデザインを考えると、それをお客様に施す前に練習にも時間を使います。
脚光浴びるジャパニーズネイル
オフの日も研究に充てているので、時間はまったく足りません。それでも好きなことを仕事にできているので、心から感謝しています。むしろ、好き過ぎて根を詰めてしまう傾向があるので、健康管理には留意しているくらいです。
どういう人がネイルアーティストに向いているかと言うと、とにかくネイルアートが好きということに尽きます。手先が器用なことが第一条件のように受け取られがちですが、器用な人ほどすぐにできてしまい、その先の壁を越えることが難しくなります。好きという気持ちは器用さよりも優先されるのです。喩えて言えば、ウサギとカメです。器用なウサギは練習不足に陥り、不器用でもコツコツと努力する人がこの仕事には向いています。
そして、いいネイリストの条件は、お客様をきれいにして喜んでいただけることに喜びを感じられることです。自分できれいな施術ができたとうれしがっているだけでは自己満足に過ぎません。
私自身は、アートだけでなく、施術中のトークにも気配りするよう心がけています。お客様によって、自分がおしゃべりしたい人、こちらがおしゃべりして聞き役に回りたい人などそれぞれ違います。そういうお客様の雰囲気を読み、さらにシャイな人からも希望を引き出して期待以上の作品を完成させることをめざしています。
ここ1年くらいでジャパニーズネイルアートはアメリカでも非常に脚光を浴びています。日本のネイルアートが世界でクオリティー、デザイン共にトップなのではないかと思っています。ですからジャパニーズネイルを習得する人にはこれから可能性がさらに広がっていくと確信して教えていますし、私自身も常に勉強や研究を重ねながら邁進していきます。
この仕事にゴールはないですね。ゴールが見えた時は引退する時だと思っています。
●氏名:田畑有香(Yuka Tabata)
●現職: ネイルアーティスト、OCNB(Orange County Nail & Beauty) & ELNB (Embellir Nail & Beauty) 所属
●前職:日本での化粧品販売、宅急便会社勤務
●取得した資格:Manicurist (State of California)
●ビジネス拠点:カリフォルニア州オレンジ郡コスタメサ、ロサンゼルス郡トーランス
●その他:OCNB付属のネイルアーティスト養成校でインストラクターも務める。
●ウェブサイトなど:www.ocnailbeauty.com elnb.us
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