シリーズ世界へ! YOLO⑭
Pura Vida! コスタリカ 前編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 
 

 コスタリカのシンボル、ナマケモノ Photo © Mirei Sato

コスタリカのシンボル、ナマケモノ
Photo © Mirei Sato

Arenal アレナル

 コスタリカは小さい国だから、端から端まで突っ走れば5時間でドライブできる。国土の中央には、活火山を含めた標高4000メートル級の山々が連なっていて、高台からは、晴れていれば太平洋もカリブ海も見渡せる。
 山の上では雲がかかって霧雨が降っているのに、カリブ海側では湿気と高温に見舞われ、太平洋側には乾燥した涼風が吹いている…。そんなことが当たり前のマイクロ・クライメート(微気候)な国である。

 サンホセ周辺のセントラル・バレーには活火山が幾つもある。一帯では1日1〜2回は地震が起きていて、ちょっとの揺れでは市民は気にも留めない。
 サンホセから北西へ車で約1時間半走ると、コスタリカの火山の中で一番有名なアレナル山が見えてくる。標高は約1600メートルとそれほど高くはないのだが、山の形がなんとも言えず美しい。山の一部が向きによってそう見えることから、住民は愛着を込めて「横たわるインディアンの男」と呼んでもいる。
 火山だから、当然あちこちから温泉が湧き出ていて、麓の街フォーチュナ(Fortuna)には、それをいかしたホテルや保養施設が並んでいる。日本人も多く行く場所だ。

 私が着いた日はあいにく雨混じりの天気だったが、夕方やむと、青く輝く山の稜線が薄明かりに浮かび上がった。山の裾野では、夜になると緑色に光るホタルが飛び交い、幻想的だ。温泉に向かう石段を降りようとしたら、アルマジロ(armadillo)がいきなり飛び出してきた。こちらも驚いたが、あちらもビックリしたに違いない。矢のように逃げてしまった。

 コスタリカで観光客に一番人気があるアクティビティーといえば、ダイナミックな景観の中でスリル満点に楽しむジップラインだろう。アレナル山と麓のアレナル湖を眼下に見やりながらのジップラインは、ホエザルになった気分で最高だ。

 アレナル山の周辺は国立公園になっていて、野生動物の宝庫だ。ドライブの途中で、グレート・グリーン・マカウ(great green macaw=ヒワコンゴウインコ)や、コスタリカのシンボルともいえるナマケモノ(sloth)を見ることができた。ほとんど木の上で寝て過ごし、ウンチする時だけ地上に降りてくる。それも1週間にたった1度というから、なかなか真似できないナマケっぷり。

 山から流れ出すサラピキ川(Sarapiqui River)では、急流下りが面白い。バードウォッチングも楽しめる。

 色とりどりの美しい鳥がいっぱいいるコスタリカだが、実は「国の鳥」は、地味すぎるほど地味なツグミ(clay-colored thrush)だ。サラピキ周辺でたくさん見かけた。
なんの取り柄もなさそうな灰色の小鳥だが、雨季に入ると求愛のために鳴き始め、ツアーガイドいわく、その歌声は「世界一美しいオーケストラの合唱のよう」なのだそうだ。
同時に、農業大国コスタリカで、雨季の訪れを農家に知らせる大事な役目も果たしている。「人間と同じで、見栄えがいい鳥ほど役に立たず、むしろ始末が悪かったりする」と言っていた。
 


 

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