ITコンサルタント
トニー 山梨

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「ITは企業にとってのユーティリティー 的確かつ迅速な問題解決が鍵」

 わが社の業務内容は企業のネットワークのトラブルシュート全般、ネットワークを含むサーバーのビルドアップ、レストランの会計システムや人事システムのデータのセットアップとそのメンテナンスなどです。

 もともとはコンピュータとは関係ない、ロサンゼルスにある日本語媒体の営業職についていました。その後、日本からアメリカに進出してきたソーシャルメディアの営業の地域責任者として転職。その会社が1999年に撤退した後、ホームページを作成する会社をパートナーシップで立ち上げました。私が営業、パートナーが技術面という役割分担だったのですが、彼が日本に帰ることになり、私が技術まで担当しなければならなくなったのが最初の転機と言えるかもしれません。

 今の会社を設立したのは2004年です。前の会社と今の会社の間に、プログラムについて教えてくれる人に出会い、次第にIT分野に関心を持つようになったのです。当時は、日本語ソフトを入れるのも普通の人にとっては大変だった状況もあって、最初はソフトのセットアップやトラブルシュートを個人向けに始めました。一気に顧客が増えたのは、某日系企業の駐在員向けアメリカ生活マニュアルのような冊子に、私の会社が「夜でもコンピュータ関連の修理に駆けつけてくれる」と電話番号付きで紹介されていたことがきっかけのようです。まさに口コミのパワーですね。

 トラブルシュートに時間は関係ありません。「インターネットにつながらない。どうしても明日までに直す必要がある」と夜中に電話がかかってくることも珍しくないんです。営業時間とは別に、顧客にはいつでもつながる電話番号を渡しているので、寝ていない限りは鳴った電話には必ず出ます。

 顧客は、次第に個人から企業へと変わってきましたが、それも口コミの力です。ある時、見知らぬ会計士から電話がかかって来て、彼のクライアント企業がコンピュータの面倒をみてくれる人を探していると言われました。どうして私のことを知っているかと聞くと、どこかで私の名前を聞いたからだと答えました。その後数社紹介してくれたので御礼をしたいと申し出ると「いや、きちんとその会社の面倒をみてくれれば、それで十分だから」と言われたことが印象に残っています。

マニュアル読解力とリサーチの積み重ね

 コンピュータのバックグラウンドがないのに、どうしてITの会社を続けていられるかと言うと、性分として「やり出したら止まらない」からかもしれません。自分でとことん納得しないと気が済まない性格なのです。たとえば、顧客のマイクロソフト関連の問題を解決しないといけなかった時、マイクロソフトのテクニカルサポートの人と3時間以上チャットを続けたこともありました。普通は「ここを読むように」と1回リンクを渡されておしまいのようですが、私は「それでは理解できない。もっと教えてほしい」と、自分がわかるまでテクサポにくいさがったのです。その甲斐あって、「なるほど、こうやるんだ」と納得してセットアップできました。

 テクニカルな書類も山ほど読みますが、苦ではありません。ITの仕事に向いているかどうかは、マニュアルをきちんと読みこなすことができるかどうかで、最初の分かれ道がくると思います。顧客の問題を解決するためには、リサーチを積み重ねる必要があります。顧客の望むことを把握して、それに合わせたリサーチを行うことが、ITコンサルタントには必須です。

 今は正社員2名とパート3名のスタッフもいます。若い社員に「この仕事は面白い」と言われるとすごく嬉しいですね。やっていて良かったと思えます。

 ITコンサルタントとしては、3年先までに限って言えば将来は明るいと見ています。もはやコンピュータのネットワークはユーティリティと同じなのです。コンピュータもネットワークもダウンしていると会社の業務自体がストップしてしまいます。水道が止まったらすぐに水道屋が呼ばれるように、私たちの仕事もコンピュータが使えなくなったらすぐにお呼びがかかるわけです。スマホやタブレットが出てきても、3年くらいではこの状況は変わらないはずです。

 10年後も安定しているかと問われると、それはまったくわかりません。将来的には、ITを含め、ビジネス全般をコンサルティングして、黒子として企業の成功に役立ちたいというのが、私の夢です。
It consultant Tony

My Resume
●氏名:ヤマナシ・トニー(Tony Yamanashi)
●現職:ITコンサルタント(Tokios代表)
●前職:ソーシャルメディア営業
●取得した資格:Certificate of Completion of Data Recovery
●ビジネス拠点:南カリフォルニア、出張ベースではカリフォルニア全域、ネバダ、アリゾナ
●その他:最近トーランスのオフィスビルに転居し、スタッフも増員して会社としての体制がより整備された。
●ウェブサイトなど:tokios.net

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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