シリーズアメリカ再発見㉝
アイオワ 農業地帯をゆく

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

デュビュークの急傾斜を上り下りするケーブルカー「フェネロン」 Photo © Mirei Sato

デュビュークの急傾斜を上り下りするケーブルカー「フェネロン」
Photo © Mirei Sato

RIVER 大河

 IOWA。州の名前が2つの母音続きで始まるのは、アメリカでアイオワ州だけだと聞いた。言われてみればその通りだ。もう1つ雑学として、州の東西両端の境界線が、上から下まで「川」である、というのも全米でアイオワだけらしい。西はミズーリ川、東はミシシッピ川だ。

 東側、ミシシッピ河畔にあるデュビュークの街を訪れた。ビクトリア風の建築が並び、教会も多いが、バーも多い。ニューヨークなどの都会からすれば小さな田舎街に見えるが、大半のアメリカ人からすると「繁華なカレッジタウン」となる。デュビュークの周辺50マイルに9つの大学があり、小さな街にしては夜中までにぎやかだ。
 観光名物のケーブルカー「フェネロン」に乗った。「世界で最も距離が短く、最も傾斜が激しい鉄道」といわれている。終点の丘の上から、ミシシッピ川と街が一望できる。昔は、汚水や悪臭のせいで「アイオワ州の脇の下(armpits)」と呼ばれたこともあるデュビュークだが、ここ15年で再開発が進み、今はリバーフロントがすっかりきれいになった。

 川をはさんで手前がアイオワ州、右がイリノイ州、左がウィスコンシン州になる。いわゆる「トライステート・エリア」で、このへんに住む人のアイデンティティーは1つの州に属するというものではない。自宅はアイオワで職場はウィスコンシン、子供を預けるのはイリノイ、なんていうことも普通にある。州ごとに税制や税率が違うから、ガソリンスタンドも使い分け。特に高級な買い物をする時は、お得な州を選ぶという。

 当然ながら、プロスポーツもカレッジスポーツもさまざまなチームのファンがいて、野球なら、カージナルス(セントルイス)、ツインズ(ミネソタ)、ブリュワーズ(ミルウォーキー)、カブス(シカゴ)、ホワイトソックス(シカゴ)のファンが入り混じる。フットボールなら、天敵同士のパッカーズ(グリーンベイ)とベアーズ(シカゴ)のファンが半々いる。毎晩どれかしらチームの試合があるから、デュビュークの街のスポーツバーはいつも熱気がある。

◆  ◆  

 デュビュークを出て、ミシシッピ川に沿って北へ向かった。

 アイオワといえば、アメリカ人にも「middle of nowhere」と形容されるぐらい、どこまでも平らなトウモロコシ畑というイメージがあるけれど、このあたりはそんな先入観をくつがえしてくれる風景が続く。
 なだらかな丘陵に、対照的な断崖。サイロや赤い屋根の農家、木陰で遊ぶ牛や馬。紫や黄色の野生の花も揺れている。紅葉の季節はさぞ美しいだろう。

 ウィスコンシン州に届くちょっと手前に、パイクス・ピーク州立公園がある。ここからのミシシッピ川の眺めは、最高だ。
 


 

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