アパラチアン・トレイル
人気急上昇で環境破壊進む?

AppalachianTrail-2

 ジョージア州からメイン州まで、14州を通過する総延長約3500キロの自然歩道「アパラチアン・トレイル」。ここを歩いて踏破しようとする人の数が急増しており、環境破壊を心配する声が上がっている。
 ニューヨーク・タイムズ(8月30日付)によると、多くのハイカーが、ジョージア州のスプリンガー・マウンテンを春に出発し、メイン州のバクスター州立公園が10月15日に閉鎖される前に同州のカタディン・マウンテンの山頂のゴールをめざす。
 アパラチアン・トレイルを一躍有名にしたのは、「A Walk in the Woods」(1988年出版、ビル・ブライソン著)のベストセラー小説だ。小説の影響で、翌99年、アパラチアン・トレイルの利用者は45%も増えた。
 今年9月には、小説をもとにした同名の映画が、ロバート・レッドフォードとニック・ノルティ主演で公開され、アパラチアン・トレイルの人気が再燃している。
 昨年公開されたリース・ウェザースプーン主演の映画「Wild」で、舞台となったパシフィック・クレスト・トレイルを歩くハイカーが急増した例からも、アパラチアン・トレイルのさらなる「混雑」が予想される。
 利用者が増えるにつれ、山頂でお祭り騒ぎや問題行動を起こす人も増えている。
 そのため、バクスター州立公園では、通行者の制限や、トレイルの一部閉鎖を検討している。すでに1日の駐車台数を制限し、12人以上のグループの利用や、公園内でのゴミ捨てや飲酒、トレイル沿いでのキャンプも禁じている。今後さらに、許可証の発行などで入園者を制限する予定だ。
 特に、ウルトラ・マラソン・ランナーが、アパラチアン・トレイルを46日間8時間7分で制覇(過去の記録を3時間以上も早めた)した際に、カタディン山頂でシャンパンを振りまいて祝った行為が、問題になった。
 一方で、国立公園局や70以上の地方自治体と協力してトレイルを管理する「アパラチアン・トレイル保護団体」は、利用者の増加を歓迎している。ウェブサイトで、レッドフォードの映画を宣伝しているほどだ。個人が責任を持って利用すれば、ハイカーが増えても問題はないと考えている。

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