第41回 キャンパスの安全性

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

学校のゲートは登下校時以外は安全のために閉められている Photo © Keiko Fukuda

学校のゲートは登下校時以外は安全のために閉められている
Photo © Keiko Fukuda

 12月頭に起こったサンバーナディーノのリージョナルセンターでの乱射事件。現地から私たちが住む地域までは自動車で1時間ほどの距離ということもあり、ニュースが飛び込んできた瞬間から「車で逃走している容疑者が移動して来たらどうしよう」という不安に駆られた。ニナが通う中学に移動…確率的には低いはずだがそういう思いが頭をよぎった。

 結局、実行犯たちは早い段階で警察に射殺された。しかし、怖いのは、銃撃を行った彼らのような人間が、アメリカの中に潜伏している危険人物のほんの一握りに過ぎないに違いないということだ。

 危機意識には個人差がある。あるママ友はまだ犯人が捕まっていない時点で「テロだったらどうしよう。こっちまで移動して来たらどうしよう」と言う心配性な私に、「2人だけなんてテロとは思えない。きっと個人的な恨みによる犯行じゃないの?」と言った。しかし、計画的な犯行だったことはすぐに証明され、さらに犯人の携帯電話からは高校を撮影した画像が見つかった。実際の犯行に及んだリージョナルセンター以外にも、彼らが学校も候補に入れていた可能性が高い。

 サンバーナディーノ事件の翌週、ニナを学校に送って行く車内で「銃を持った人が学校に紛れ込んで来て乱射したらどうする?」と彼女に質問してみた。「うちの中学には警備員もいないし、そのためのドリル(訓練)もやってないし、変な人が入って来たら、その段階でできることは何もないと思う。おしまいかも」と、彼女の返答はドライなものだった。

脅迫の知らせを受けて学校に駆けつけた親たち

 
 ニナとそのやりとりをした翌朝の11時頃、自宅に学区から連絡が入った。「レドンドユニオン高校(同学区内の高校)に落書きによる脅迫が舞い込んだ。現在、調査中。詳細がわかったら改めて連絡する」といった簡単なメッセージだったが、慌てた私はレドンドユニオン高校をニナが通う中学と聞き間違えてしまった。しかも、その日は午後から打ち合わせが入っていて、中学まで迎えに行くことができない。ニナは30分ほどの道のりを歩いて帰ってくる。打ち合わせをキャンセルしようかとも思った。長男のノアを一人で日本に行かせた時もそうだが、最悪の事態を想定してしまうのが私の悪い癖なのだ。その後、続報はこなかったので、何も起こらなかったのだと理解し、私は仕事に出かけた。

 その日の夜、家に帰るとニナがこう言った。「レドンドユニオン高校に通っている友達からメールで、『今日、脅迫事件があったせいで、サンバーナディーノみたいになるんじゃないかと心配した学生の大半が教師の了解を得ずに早退してしまった』って知らせてきたよ」。おお、舞台は中学じゃなくて高校だったのか、とそこで初めて事実を把握、インターネットで検索してみた。

 すると、同日にレドンドユニオン高校を含む3校が脅迫を受けたことがわかった。最初は隣の学区のミラコスタ高校に爆弾を仕掛けたという電話がかかってきた。さらに近隣の小学校にも同様の脅迫、続いてレドンドユニオン高校のキャンパス内にも「お前らは死に値する動物」といった落書きが発見された。

 ニュース映像には、学区からの連絡を受けて子どもの迎えに駆けつけた親たちの長蛇の列。「サンバーナディーノのようなことが起こった今、ここで起こってもおかしくない。子どもの安全が第一だ」とある保護者はインタビューに答えていた。私もまったく同じ気持ちだ。

 米国内のどこかの学校では既に実施されているかもしれないが、火事や地震に限らず、銃撃事件に備えた訓練も行うべきではないか。もちろん、そのような事態は起こってほしくないが、コロンバイン高校やサンディフック小学校の例を出すまでもなく、可能性がゼロとは言えないのが今のアメリカの現実だ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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