第10回 空港PDXのちょっといい話

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

 

夜遅くに空港に到着してピアノの音に和む Photo © Michiko Ono Amsden

夜遅くに空港に到着してピアノの音に和む
Photo © Michiko Ono Amsden

夜でもピアノの生演奏が
迎えてくれる空港

 成田からデルタ航空の直行便が飛んでいるポートランド国際空港(略称PDX)。現在はこの直行便だと到着は朝だが、今回はサンフランシスコで取材があって、空港に着いたのが夜の10時過ぎ。やれやれと思って、飛行機を出て空港内に入るとどこからかきれいな生演奏のピアノの音が…。気のせいではなく、なんと空港にはグランドピアノが置かれ、こんな夜遅くにジャズを弾いていたのだ。なんだかポートランドに帰ってきたなあととてもうれしくなった。

 これは、PDXのアート&エンターテイメント・プログラムの一つで、夜に昼に空港でいろんなミュージシャンが演奏をしているのだ。また、年間サイクルで地元のアーティストのインスタレーション(空間展示のモダンアート)の展示スペースが2カ所、半年サイクルの写真・パネル展示スペースが3カ所あって、ユニークなアートがポートランドらしい雰囲気を醸し出している。もう一つ、PDXに到着した時にいつも何か他とは違う感じがするのは、空港が明るい色のカーペット敷きということもあるかもしれない。

カルト的な人気を
集めていたカーペット

 このPDXのカーペットは、2015年に入って張り替えられたのだが、最初にカーペットが敷かれたのは1980年代の終わり。空港の雑踏の音を軽減すべく、1987年に地元の建築デザイン会社であるSRGが依頼を受けてデザインしたものだ。SRGは、当時、空港でよく使われていた伝統的なアースカラーのカーペットではなく、斬新なブルーとグリーンを用いて「ノースウエストはコアである」ということを表現しようとしたのだ。そんなカーペットは、カルト的な人気を呼んで、SNSにこのカーペットを写した写真が2万枚以上もアップされているという。しかし、25年の時を経て、老朽化したカーペットの総張り替えが発表されたのが2013年。あまりにも愛されたカーペットだけに、惜しむ声が続々だったが、遂に2015年に正式に空港で“引退発表”が行なわれると共に張り替え工事がスタートした。新しいカーペットは、グリーンの基調は残して、飛行機の翼やハイキングトレイル、木の葉などのモチーフを反映した黄色や赤のラインが加わった。原材料は、(もちろん)カーペットやボトル、ガラス瓶のリサイクル。

 それでも、古いカーペットのデザインを惜しむ人は多く、パターンを使った靴下やTシャツなどのグッズが「メイド・イン・オレゴン」というオレゴン産専門ショップで販売されていて、まだまだマニアの間では人気。このあたりの“愛着”がいかにもポートランドらしい。

チェックインスペースも新パターンのカーペット敷き Photo © Michiko Ono Amsden

チェックインスペースも新パターンのカーペット敷き
Photo © Michiko Ono Amsden

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る