第10回 空港PDXのちょっといい話
文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)
- 2016年2月1日
- 2016年1&2月合併号掲載, オレゴン州
夜でもピアノの生演奏が
迎えてくれる空港
成田からデルタ航空の直行便が飛んでいるポートランド国際空港(略称PDX)。現在はこの直行便だと到着は朝だが、今回はサンフランシスコで取材があって、空港に着いたのが夜の10時過ぎ。やれやれと思って、飛行機を出て空港内に入るとどこからかきれいな生演奏のピアノの音が…。気のせいではなく、なんと空港にはグランドピアノが置かれ、こんな夜遅くにジャズを弾いていたのだ。なんだかポートランドに帰ってきたなあととてもうれしくなった。
これは、PDXのアート&エンターテイメント・プログラムの一つで、夜に昼に空港でいろんなミュージシャンが演奏をしているのだ。また、年間サイクルで地元のアーティストのインスタレーション(空間展示のモダンアート)の展示スペースが2カ所、半年サイクルの写真・パネル展示スペースが3カ所あって、ユニークなアートがポートランドらしい雰囲気を醸し出している。もう一つ、PDXに到着した時にいつも何か他とは違う感じがするのは、空港が明るい色のカーペット敷きということもあるかもしれない。
カルト的な人気を
集めていたカーペット
このPDXのカーペットは、2015年に入って張り替えられたのだが、最初にカーペットが敷かれたのは1980年代の終わり。空港の雑踏の音を軽減すべく、1987年に地元の建築デザイン会社であるSRGが依頼を受けてデザインしたものだ。SRGは、当時、空港でよく使われていた伝統的なアースカラーのカーペットではなく、斬新なブルーとグリーンを用いて「ノースウエストはコアである」ということを表現しようとしたのだ。そんなカーペットは、カルト的な人気を呼んで、SNSにこのカーペットを写した写真が2万枚以上もアップされているという。しかし、25年の時を経て、老朽化したカーペットの総張り替えが発表されたのが2013年。あまりにも愛されたカーペットだけに、惜しむ声が続々だったが、遂に2015年に正式に空港で“引退発表”が行なわれると共に張り替え工事がスタートした。新しいカーペットは、グリーンの基調は残して、飛行機の翼やハイキングトレイル、木の葉などのモチーフを反映した黄色や赤のラインが加わった。原材料は、(もちろん)カーペットやボトル、ガラス瓶のリサイクル。
それでも、古いカーペットのデザインを惜しむ人は多く、パターンを使った靴下やTシャツなどのグッズが「メイド・イン・オレゴン」というオレゴン産専門ショップで販売されていて、まだまだマニアの間では人気。このあたりの“愛着”がいかにもポートランドらしい。
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