あけましておめでとうございます。今年も「いいね!と言わせる人事改革」をご愛読いただき、読者の皆様の人事力をアップされることを願っております。
2016年の1回目は「意外と知られていないアメリカの人事の仕事③」として、Employee Relationsとベネフィットに関する対応についてお話しします。
【Employee Relations (ER)】
日本では長く終身雇用が主流であったため、根底に「採用した従業員は長期的に勤務する」という考えが根強く、それゆえ従業員の定着率向上のために行動する発想が乏しいように思います。これでは従業員本位で人事改革を行う競合他社が現れれば、人材の流出が深刻化しても不思議ではありません。雇用主から従業員への情報発信はもとより、従業員が雇用主に伝えたい情報を的確に受けることはER最大のミッションと言えるのです。
具体的には採用オリエンテーション、キックオフミーティングやコミュニケーションミーティングなどを通じて、雇用主の意向を的確に従業員へ伝え、また両者が気兼ねなく意見交換をする場を設けたり、社内イベントの企画や実施、職場における悩み事相談、Exit Interview(退職時の聞き取り調査)を行ったりするなど、多岐にわたります。人事部がERを適切に実行することで、退職可能性のある従業員を早期に発見し、社内にある潜在的な不満(=将来的訴訟リスク)などを察知することが可能になり、ひいては健全な企業運営を行うことができるのです。
【ベネフィット関連】
以前にも書きましたが、アメリカではベネフィット(福利厚生)の企業間格差が非常に激しく、時として数千ドルの年収よりもベネフィットの優位性で優秀な人材採用が決定する場合もあるほどです。最も代表的なものは医療保険や休暇で、こういった制度について充分なマーケティングを実施し、企業経営におけるコストインパクトなども考慮し、従業員と雇用主双方に優位性のある制度構築を行うことが非常に重要です。たとえば保険であれば、単に保険料のコストダウンだけを考えるのではなく、同じコストなら従業員に有利な内容の保険を、同じ内容ならコスト削減が可能なプランを、といった具合に様々な保険プランを比較検討するのです。休暇についても単に日数を増やせば従業員は喜びますが、雇用主のコスト増を招くので、競合他社や地域の平均データなどを収集し適切な日数を設定し、年度内に消化できなかった休暇の持ち越しルールなども検討する必要があります。また、祝日についてもアメリカでは雇用主が休みにするか否かを独自に決定しますので、独立記念日やクリスマス、感謝祭など主要祝日は別としても、その他祝日は地域性、取引先や顧客への影響なども考慮して決定する、これらもまた人事部の重要な役割のひとつとなっています。
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