認知症を患う高齢のゼヴは、同じ高齢者ケア施設に住むマックスから、ある使命を託される。アウシュヴィッツで一緒だった2人は、戦犯を逃れて別人のふりをして暮らすドイツ移民に制裁を下す決意をし、体の不自由なマックスに代わって、ゼヴが1人で実行するのだった。起きる度に記憶が曖昧になっているゼヴは、マックスの手紙を読んで、使命を全うしていくのだが……。
ゼヴ役を「The Sound of Music」のクリストファー・プラマー、マックス役をTV「Mission: Impossible」のマーティン・ランドーが演じ、高齢の重鎮俳優の健在ぶりを見せつける。そこかしこにうなる展開が用意され、最後の意外な事実に仰天する本作は、稀に見るスマートな脚本。しかし、主役陣が高齢ゆえに保険代が高く、製作に難航したという。結局、脚本を書いたベンジャミン・オーガスト自身が資金集めをし、ユダヤ系団体からの援助を得て完成にこぎ着けたそうだ。そんなオーガストは、福島で英語教師をし、広島の原爆記念館を訪れた経験を持つ。長期滞在したベトナムでも戦争の悲劇を目の当たりにし、本作の執筆に至ったそうだ。劇中、2世、3世が戦争の悲劇を知らないでいる場面があるが、本作の存在がなければそうした若い世代が増え続ける。歴史を繰り返さないためにも、本作のような高いクオリティーの、ドラマで展開する反戦映画をできるだけ多くの人に観てもらいたいと思った。(3月4日より劇場公開)
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