マーベル・コミックの映画化権のほとんどを持つディズニー映画が、アイアンマンやキャプテン・アメリカの映画版のヒットに乗じて、彼らヒーローがチームとなって活躍するアベンジャーズ・シリーズを製作し成功させた。それを見たワーナーブラザース映画は、映画化権を持つDCコミックスのスーパーマンやバットマンらがタッグを組むジャスティス・リーグの製作に乗り出した。
その第1弾が昨年公開された「Batman v Superman: Dawn of Justice」だ。リーグの主メンバーの紅一点となるワンダーウーマン役にガル・ガドットが抜擢されたのだが、なぜわざわざイスラエルの女優を起用したのか分からなかった。しかし、彼女が主役を張った「Wonder Woman」を観て納得したどころか、素晴らしいキャスティングだとうなった。ガルの持つ正義感溢れる一途な雰囲気が役柄にピッタリなだけでなく、「ゼウスが粘土から作った」という生い立ち設定にマッチする人間離れした容姿を体現できる抜群のスタイルの持ち主だからだ。劇中のアクションの数々をシャープかつ優雅にこなしていた彼女だが、記者会見では「立っているのはディーヴァだからじゃないのよ(笑)。ぎっくり腰になって座れないの」と言い訳をして立ちっぱなしでインタビューに応じた。そんな彼女に、まずは演じた役ダイアナについて聞いた。
「ダイアナは、素晴らしい人格の持ち主だと思うの。好奇心旺盛で、暖かく、情愛のある性格。彼女はみんなにとってベストなものを選ぶけど、ちょっと厚かましくて、生意気なところもある。とにかく素晴らしい女性だけど、同時に完璧になってはダメだと思っている。とても傷つきやすく、また、ナイーブで混乱したり、心配性だったりするわ。そして、自分の使命を全うすべく全力を尽くす。彼女の全てが私は好きよ。特に完璧ではないところがね」
ウニを踏んだ?!
弓や剣、ロープなどを使った大がかりなアクションがこれでもかと登場する「Wonder Woman」。撮影中のケガについて聞くと、意外な落とし穴があったようだ。
「アザは常に作ったけど、大きなものはなかったわ。あちこちに小さいアザを作っただけね。私にとって一番大変だったのは、戦闘シーンをイタリアで撮影した時のことよ。ウニを踏んでしまったの。そりゃーもー痛かったわ。それくらいよ。みんなプロ意識の高い人ばかりだったから、撮影現場では常に準備万端な状態だった。『あら?』というようなことやミスはなかったわ。ただ、天候には悩まされたけどね……」
ワンダー・ウーマンは、ほかのスーパーヒーローと違い、人間に対して哀れみの感情を持っているのが特徴だ。ガル自身、それについてどう思っているのだろう。
ホロコースト生存者の祖父
から学んだこと
「まさにそれこそが彼女の最大の強さだと思うの。監督に初めて会った時、お互い、自分の家族や人生について話したの。私はホロコーストの生存者だった祖父のことを話したわ。祖父は私に、『人生において暗く辛い時期を過ごすこともあるだろう。でも、どんなに暗く辛くとも、私たちは心の中の光を見つける必要があるんだよ』って教えてくれた。哀れみや同情というのは、とても大きなことだと思うわ。それは、私たちにとってとても大切なことで、それをこの映画では伝えている。スーパーヒーローが登場する映画のエンディングは、必ずしも悪者がヒーローに殺されて終わるというものではないのよ。私たちは、みんなが共感を持ち、実際に実行できるような深いメッセージを映画で表現したいと思ったの」
「ワンダー・ウーマン」は、ガールズパワー炸裂というだけでも筆者にとって嬉しい作品だったが、映画を観ると人間の性や戦争がもたらす悲劇について深くえぐり、平和について重厚なメッセージを投げかけていることが分かる。多くの人に観てほしいと思った作品だ。そして、ワンダー・ウーマンそのもののようなガルのワンダー・ウーマンをもっと観たいと思うのは筆者だけではないハズだ。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします