ハリウッドの女優はモデル身長が多く、身長152センチの筆者は取材する度に劣等感のようなものを味わう。ところが、サルマ・ハエックは違う。いつもハイヒールを履いている彼女だが、それでも筆者とあまり変わらない。実際の身長は、公称157センチよりも低いと思われる。
彼女を好きな理由は身長だけではない(笑)。もの凄く頭が切れるのに、それを鼻に掛けることもなく、あけっぴろげにストレートに自分の考えを話す。まるで友達と会話しているような感じで、取材していることを忘れてしまいそうになる。今回の独占取材も、カウチに隣同士で座って話すうちに友人との午後の会話を楽しんでいる錯覚に陥りそうになった。
「壁」は愚の骨頂
メキシコ出身の彼女は、ハリウッド女優を夢見て渡米するも芽が出ず、不法移民だった時期もあった。そんなサルマだけに、トランプ大統領の提案している「壁」について熱く語った。
「メキシコからの不法労働者のほとんどは、熟練農民よ。彼らは農民としてものすごいスキルを持っているけど、ドラッグを栽培する手助けをしたくなくてアメリカに職を求めてやって来た人たちなの。アメリカは農場はあるけど熟練した農民がいないから、メキシコから不法でやって来る熟練農民の手を借りるしかない状態だわ。そもそも、壁を作ったって、それを乗り越えたり、地下通路を作ったり、川底を潜ったりして、やっぱりやってくるわ。壁を作るためにお金や労力を費やすなんて愚の骨頂。それよりも、彼らを合法滞在者にして税金を払わせた方がよっぽどアメリカの得になるのにね」
白髪頭も楽しみ?!
とても見えないが、昨年、50歳になったサルマ。メキシコ人ながらトップのハリウッド女優として活躍する彼女は、自身の人生をどう振り返るのだろう。
「私は本当にものすごくラッキーだと思っている。一番のラッキーは、人生の素晴らしいパートナー(夫のフランソワ=アンリ・ピノー)と出会えたことよ。彼は私にインスピレーションを与え続け、サポートしてくれる。次にラッキーだと思うことは、子供を持てたこと。しかも夫にはすでに子供がいたから、3人の継母にもなれた。キャリアも順調だわ。『ハリウッドで活動できるワケない』『女性は30歳になったらお払い箱になる』ってみんなに言われたのにね。ラテン系が活躍できる時代になってとても嬉しい。最初にハリウッドに来たときとは全然違う。当時は可能性はゼロだったもの。それに女性の活躍の場も増えた。私は、とても興味深い人生を歩み、そして、変化を目撃することができた。50歳になって嬉しいわ。本当にいろいろなことを学ぶことができるんだもの。50歳になって、リラックスするという境地にたどり着いた。美人ランキングで1位じゃなくてもいいってね(笑)。ほら、(髪の毛をかきあげて白髪が多く生えている部分を見せながら)白髪があるでしょ。これも染めないでいるの。白髪頭の自分がどんな風になるのか見たくてね。ボトックスもしてない。後で気が変わるかもしれないけど、ありのままの50歳の自分でいるのを心地よく思っているの」
新作映画「How to Be a Latin Lover」で、メキシコからの移民に扮したサルマ。同作品は、メキシコの文化を観客が肌で感じ取れる映画になっている。サルマにとってラテン系で誇りに思うことを聞いた。
「本作は、私の演じたキャラを通してラテン系の素晴らしさを紹介しているわ。それは、お互いを助け合い、家族を大切にするというものよ。何があっても相手を許し、常にドアを開ける。良いときも悪いときも支え合う。そんなラテンの文化を私はとも誇りに思っている。そして、私たちは年長者を敬う。私はアメリカで、不便になった年長者を遠ざけるのを見てきた。私たちはそうした不便さと渡り合う必要があると思っているの。彼らの持つ知恵に敬意を示し、彼らを愛し、敬い、大切にするべきだと思う。なぜなら、彼らは私たちのために存在しているからよ」
歯に衣着せず、自分の意見を筋道立てて堂々と話すサルマ。彼女の芯の強さを改めて実感した。
Special thanks to Carly Haller & Kelly McDunn / 42 West
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