最初にこの俳優に注目したのが、2011年の映画「Thor」。主役のソーよりもトム・ヒドルストン演じる悪役ロキに目が吸い寄せられた。ナイーブなルックスと物腰ながら強烈な存在感を放ち、悪事を悪びれもせずやってのけるキャラクターを実にリアルにそして好感度抜群に演じて見せていた。日本の映画誌の人気投票に名前が並ぶようになった矢先、テーラー・スイフトとの熱愛が報道され、世界を仰天させた。
そんなトムが新たに挑んだのが、「Kong: Skull Island」でヒーローとして活躍するジャングルのエキスパート、コンラッド役。ハワイやヴェトナムなどのジャングルで撮影された同作で、トムはオフの日には冒険を楽しんだようだ。
「ヴェトナムには世界最大の洞窟(ソンドン洞)があるんだけど、数日オフがあったから行ってみたんだ。いやー、すごかったよ。洞窟はもの凄い高さと広さで、奥に進むと泳がないと行けない場所もあった」と興奮気味に話す。
また、こんな冒険譚も教えてくれた。「あれは2015年の感謝祭の週末だった。イギリス人だから、どこにも行く当てがなくて、ハワイに行ってサーフィンを習ったよ。波はとても穏やかで海水はとても温かかった。それまでサーフィンをやったことはなかったけど、初日にボードの上に立つことが出来た。ハワイの波のお陰だよ。ウミガメも泳いでいて、ステキだったね」
人々は自然に大きく癒やされる
本作は、1954年のゴジラが持つ「地球をイジめる人類に制裁を」というコンセプトを踏襲している。前述のように意外にも(?)アウトドア派なトムは、自然とどういう関係を築いているのだろう。
「本作のテーマに荘厳な自然界の力というのがある。自然と健全な関係を築けば築くほど、人間はより人間らしくなれると思うんだ。逆に、自然との関係が悪いと人間性を失ってしまう。人々は今、自然に目を向けるようになっていると思うんだ。なぜなら、自然の力を目の当たりにすることで人間がいかにちっぽけな存在かを認識させられることが多いからね。それは人類にとって、社会にとっていいことだと思う。ユヴァル・ノア・ハラリの『Sapiens: A Brief History of Humankind』 を読んでいるだけど、地球の歴史を長期的に捉えた本で、人類が優位に立つようになったのはほんのつい最近だというのが分かる。BBCの『Planet Earth II』が好きで観るんだけど、人々は自然に大きく癒やされるとぼくは思うんだ」
部屋に入るなり、名前を言いながら記者全員と握手を交わしたり、取材中に背中をポリポリかいたりするトムは、育ちの良さと気さくさがミックスした性格のようだ。本作で演じたヒーロー役と悪役ロキとどっちが自分に近いのだろう。
選択によって何になるか決まる
「彼らは2人とも違うし、ぼくの中の違う部分を表現している。ヒーローと悪役の違いは、選択の違いだと思うんだ。違う選択をしていれば、ロキはヒーローになれた。反対にコンラッドは選択によって悪役にもなり得る。人は、選択によって何になるかが決まってくるんだ。ロキの性質には致命的な欠点があって、それは絶対に変わることはない。彼は恐らく、変わりたいと思っているかもしれないけれど、それができないというのを知っているような気がする。人間なら、セラピーを受けるかもしれないけど、彼は北欧神話の神だからね。彼は何かを代弁する存在なんだよ。移り気で気まぐれで心変わりしやすい何かをね。とにかく、ロキについて言えば、彼を絶対に信用してはいけないってこと。なぜなら、彼は常に心変わりをするからね。カオスに祝福された、神のはみ出し者なんだ」
なるほどと納得した。ちなみに、本作はエンドクレジットの後に次の作品への橋渡しとなるシーンがあるのでお見逃しなく!
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします