国外退去の対象となる犯罪 パート①

文/ミチコ・ノーウィッキ(Text by Michiko Grace Nowicki)

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 アメリカでの不道徳行為、悪質な重犯罪やその他の犯罪によって、永住権保持者も含め、すべての移民はアメリカから国外退去を命じられることがあります。一般に、犯罪により受けた有罪判決を証拠に、国外退去(強制送還)の手続きが行われるケースが多いと言えます。具体的には、移民が不道徳な行為に関わる犯罪(Crime of moral turpitude)および悪質な重犯罪(Aggravated felony)と呼ばれるもののいずれかの有罪判決を受けている場合に、強制送還される可能性があります。

 「不道徳行為の犯罪」にあたるのは一体どのような犯罪でしょうか。実は移民方上では明確には定義されていません。しかし、国務省のガイダンスによると、最も一般的な「不道徳行為」の要素は、(1)詐欺 (2)窃盗、そして(3)人や物に害を与える故意を含む犯罪だと指摘しています。さらに、不正や窃盗が関連する犯罪は、ほぼ例外なく不道徳行為とみなされるでしょう。不正行為の一部の例として、強盗や殺人を意図する暴行、配偶者の虐待、放火、窃盗やその他の犯罪目的を伴う住居侵入、誘拐、横領、悪質な飲酒運転、わいせつ行為、非合法武器所持、虚偽供述などが挙げられます。しかし、不道徳行為の全ての例をここに記載することは不可能ですので、犯罪を犯してしまった場合は、管轄裁判所から記録を取り寄せて刑事法弁護士もしくは移民法弁護士へ相談しましょう。

 あなたが受けた有罪判決が不道徳の行為に関する犯罪として分類されるべきではないと主張することも可能かもしれません。もしくは、あなたの違法行為に関する法令が不道徳行為の犯罪に関係しない要素を含んでいるかもしれません。このようなタイプの弁護には、有罪判決を受けるもとになった制定法の文言によって決まることが多いので、刑事法令(ほとんどのケースの場合州法が適用されます)が連邦の移民法の下でどのような解釈がなされるのかという論点を提起することになります。

 ただし例外として、犯した犯罪が「軽犯罪」にあたる場合は、移民法上、不道徳行為に関する犯罪に分類されない場合があります。下された刑が1年を超えない懲役であり、実際に刑務所で刑に服した期間が6カ月未満だった場合に、軽犯罪における例外として認められることがあります。軽犯罪の例としては、万引きやその他の犯罪行為を含まない暴行行為などを含みます。

 次回のコラムでは引き続き、不道徳行為の犯罪を理由に国外追放が行われる要件や免責、また悪質な重犯罪とされる犯罪行為についてお話ししたいと思います。

*本コラムは顧客からの質問を一般的なケースに書き換えたものであり、読者への情報提供を目的としたものです。特定事例における法的アドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。

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ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ライタープロフィール

ウィリアム・S・リチャードソン・スクール・オブ・ロウ卒業。米国移民弁護士協会所属、米国弁護士協会所属、ハワイ州弁護士協会所属。日本居住歴19年。バイリンガル。

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