日本の年金について「家族に関わる年金~遺族年金」

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

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一般に年金とは老後に受給する「老齢年金」を意味します。一方、「遺族年金」はまだ働いている年金加入者(被保険者)および年金受給者本人が死亡した場合に、残された遺族に支給される年金です。まず基本事項を説明します。

支給要件

遺族年金は、下記の2つの場合に支給されます。
a)年金保険料を支払っている60歳以前の人(年金被保険者)が死亡した場合
b)60歳以降老齢年金を受給している人、または受給権を得ている人が死亡した場合

遺族年金の種類

遺族年金は、下記の2つの種類があります。
1)遺族基礎年金
2)遺族厚生年金(遺族共済年金)

支給要件を満たしていれば、2種類ともの遺族年金を受給できます。

遺族の範囲

1)遺族基礎年金:配偶者と子が遺族
2)遺族厚生年金:配偶者、子、父母、孫、祖父母(優先順位あり)

1)2)において、子は18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子がいる場合のみに限定されます。
2)において、夫・父母・祖父母は55歳以上に限定されます。
またいずれも本人死亡時において、その者によって生計を維持していたこと、高所得者でないこと、が求められます。

支給額

1)遺族基礎年金:年間約78万円
2)遺族厚生年金:死亡者が受給していた、もしくは受給する予定だった老齢厚生年金の4分の3に相当する金額(一部加算額あり)

具体的な例をみていきましょう。

冒頭支給要件のうち「a)年金保険料を支払っている60歳以前の人」には、主に現役世代として日本の年金保険料を納付している日系企業の駐在員が該当します。
また「b)60歳以降年金受給者(受給予定者)」については昔日本でサラリーマンをしていた厚生年金加入者で、その後米国に移住したa)以外の方が該当します(国籍は問いません)。

a)駐在員が死亡した場合は勤務先企業の福利厚生担当者が代わり遺族年金の申請手続を行なってくれますが、b)米国在住者が死亡した場合は遺族自身で行なわなければなりません。したがって、普段から家族で年金に関する情報を共有しておく必要があります。「自分が死んだ時の話なんて縁起でもない」などと言わず、残された家族を守るためにも早いうちに家族へ年金について伝えましょう。実際年金加入者死亡後、本来は受給できたのに遺族年金のことについて「知らなかった」「手続がわからず諦めた」という理由で受給できないケースは少なくないのです。

もし既に配偶者が亡くなっている方で、自分が現在日本の遺族年金を受給していなくても、配偶者に年金受給権があれば遺族年金を受給できる可能性があります。以下の点と、配偶者の年金記録を調べてみましょう。

✔ 死亡した配偶者が生前に年金を受給していた
✔ 配偶者は年金を受給していなかったが、昔日本でサラリーマンをしていた

具体的な調査方法についてわからない方は、日本の年金事務所か専門業者へお問合せ下さい。 特に残された妻が日本語を理解しない場合など、自分で調べようにも調べられないので、周囲の知人からアドバイスしてあげましょう。

 

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

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