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米国(海外)在住者が知って得する老後の日本の年金のお話
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2016年12月1日
皆様の多くは老後の生活に向けて年金制度に加入し、毎月年金保険料を納めていることと思います。年金は社会保障政策の一環として各国で実施されており、日本企業の駐在員の方であれば厚生年金などの日本の年金制度、それ以外の米国在住者であれば米国年金(Social Security)に加入されていることでしょう。駐在員の方は元々厚生年金に加入しているわけですから日本の本社から年金に関する情報が送られてくると思いますが、それ以外の方は情報を入手する機会はほとんどありません。「米国年金に加入しているので日本の年金の情報は不要」と思われているかもしれませんが、実は米国移住前、たとえ短期間でも日本で年金に加入しれば米国年金と両方受給できるのです。しかし、そうした重要な情報も海外へ配信される機会がなく多くの方が知らないままでいます。それでも最近はインターネットを通じて情報を見つけだすことは容易になりました。しかし、そもそも制度が複雑で専門用語が多くわかりづらかったり、インターネットの情報では一部正しくないものや古い情報が氾濫して判断が難しい、といった理由で困惑している人も少なくないと思います。ここではそうした年金制度の中でも、米国在住の方に関連する情報だけをわかりやすく紹介致します。
1.年金に国籍や居住地は関係ありません
年金は将来の老後の生活のため、若くて働ける現役時代のうちに少しずつ自分のお金を積み立てていく法律に基づいた、国の「保険制度」です。保険ですから若いうちに保険料を毎月支払いますが、保険料を払い込んだにもかかわらずその後国籍が変わったり国外に転居したりしたからといって保険金(年金)を支給しないなんておかしいですよね。ですから市民権を取得したり長年米国に居住したりしている方も米国年金の他に日本の年金を受給できます。同様に日本国籍の人や日本に帰国した人も米国で加入していた年金を受給できます。(尚一部の人に適用される例外的な優遇措置については国籍や居住地が影響する場合があります)
したがって、昔渡米する前に日本でサラリーマンやOLをされていた人(これらの人は自動的に厚生年金に加入している可能性が高いです)や国民年金に加入していた人は、たとえ短期間でも年金を受給できる可能性があるのです。
2.海外在住者に適用される例外措置
では次に年金を受給できるかどうかの話に移ります。年金制度には受給するための「要件」があります。この受給要件については年金加入期間(保険料を払い込んだ期間)が25年であることです。米国在住者の中には30~40歳代に渡米されて日本の年金に25年加入していない人も多くいらっしゃいます。こうした人達はもう自分は貰う権利がないと思われているかもしれませんが、実は例外措置があって米国居住期間もこの25年間にカウントすることができるのです。具体的には次の2つの期間のいずれかを日本の年金加入期間として通算することができます。
<図:米国移住後の期間も年金加入期間として受給資格に反映される>
①米国年金加入期間(国籍不問) ②日本国籍のまま米国居住期間(市民権取得後は対象外)
私共の事務所で多くの米国居住者の方の年金相談をお受けしておりますが、2000年以降に米国へ移住された方や60歳前後までの年齢の方はこの点についてご存知の方は比較的多いようです。しかしそれ以外の長年米国に居住している方や高齢の方は、自分に年金受給権があるのに、まだそのことを知らないままの人が少なくありません。
今まで「自分は年金を貰えない」と思っていた人でも昔日本でサラリーマンやOLをしていた、短期間だけ国民年金を払っていたなどの記憶があれば受給権があるかもしれません。ダメ元で一度調べてみましょう。
3.年金記録の調査方法
手っ取り早い調べ方は、日本年金機構に直接電話して聞くことです。さすがに電話では特定の個人の受給権まで教えてくれませんが、調査方法や必要書類、最近スタートした「ねんきんネット」の使い方などを教えてくれます。定期的に日本へ行かれる方は直接自分で年金事務所を訪問するのが確実です。また私共の事務所にご依頼いただければ無料で年金記録の調査を行います。
※最新情報
上記で説明致しました年金加入要件(25年間)について、かねてより10年への短縮措置が検討されていたものの増税先送りの影響で延期されていましたが、2017年8月から施行されることになりました。加入期間(米国居住期間含め)が10年~25年間の人も受給対象となります。詳細について知りたい方はお問合せ下さい。
スペースの関係で今回はここまでとなりますが、今後も海外在住者にお得な年金情報、知っておいた方がよい情報を紹介していきます。
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