アメリカでハタラク人のための就職・転職 Q&A Vol.2
文&写真/菰田久美子(Text and photo by Kumiko Komoda)
- 2017年5月8日
アメリカで就職・転職を成功に導くヒントがいっぱいのコーナーです。前回の[アメリカでハタラク人のための就職・転職 Q&A Vol.1]に続き履歴書の書き方、就労ビザなど、アメリカでの就職・転職を目指している方の“知りたい”にお応えしています。是非ご活用ください。
Q8. アメリカでは企業はどのような手段で募集を行いますか?
アメリカでよくあるのは、社内掲示板を利用する方法です。掲示板や社内報(メール等)で募集しているポジションを告知し、社内の別の部署からの応募者を募ります。さらに、従業員に友人や知人等を紹介してもらうケースもあります。外部へ告知をする場合には、自社のウェブサイトで告知をしたり、新聞、雑誌、求人募集のウェブサイトなどの媒体に求人案件を掲載することもあります。離職者の代わりの従業員を探す場合には、短期間で採用しなければいけませんので、その場合には人材斡旋・紹介会社を利用することが最も一般的になるかと思います。人材斡旋・紹介会社では常に求職者の情報が集まっています。また、一次スクリーニングが終わっており、スピーディーに候補者を推薦できるため、欠員募集のような急を要するポジションの場合には最も効果的です。また、カレッジリクルーティングを行い、大学へ人事などの担当者が出向き、直接学生のリクルーティングを行う場合もあります。
Q9. アメリカでの採用のプロセスについて教えてください
Ⅰ. 書類選考
まずは応募者に対して、書類選考が行われます。募集するポジションについて企業はジョブ・ディスクリプションを用意していますので、このジョブ・ディスクリプションに照らし合わせながら応募者の英文履歴書(英文レジュメ)がチェックされます。募集をしているポジションに対する経験やスキルを持ち合わせているか確認されますが、同時にスペルや文法のチェックなども行われます。また職歴のある方に対しては職歴の一貫性や転職の有無、大学での専攻などもチェックされます。
Ⅱ. インタビュー(面接の実施)
書類選考が終了するとインタビューに呼ばれます。米系企業での面接の場合には、英語での面接となりますが、アメリカに進出している日系企業との面接の場合には、英語および日本語による面接が行われる場合があります。基本的には日本での面接とおなじように、事前の企業研究、志望動機、自己紹介、予測される質問の答えを用意して面接に臨むことが大切です。
Ⅲ. バックグラウンド・チェック
アメリカでは、多くの企業が採用前に経歴チェック、学歴のチェック、犯罪歴のチェック、ソーシャルセキュリティー番号のチェック、クレジットヒストリーチェックなど、バックグラウンド・チェックを採用しています。また、ドラッグテストをポジションによっては行う場合もあります。
Ⅳ. 採用決定、オファーレター
採用が決定したら、企業はオファーレター(内定通知)を発行するのが一般的です。候補者はこのオファーレターをもらったら、内容を確認して署名をした後、企業へ送り返します。オファーレターに明記されている事項は、給与、Non ExemptかExemptかステータス、勤務開始日、勤務時間、ポジション・タイトル、ベネフィット、などとなります。
Q10. OPTとは何ですか?
専門学校、短大、大学、大学院を卒業した後に、”実務研修”として期限付きでF1ビザのもと勤務ができる労働許可です。卒業の3カ月前程度を目途として、学校のスチューデントアドバイザーの指示のもと、移民局に申請します。学校によっては、9カ月以上のサーティフィケートでも申請することができます。
このOPTは学業修了後、学校で学んだ分野においてのみ、実務経験を積む目的で許可されています。期間は通常は1年間ですが、履修期間によって短くなるケースもありますので、詳しくは学校に問い合わせてください。また、このOPTは一生で一回だけ取得できるというものではなく、OPTを終了した後、さらに高いレベルの教育機関で学位をとった場合には、再度OPTを申請・取得することができます。2009年の移民法改正により、OPTカードが届いてから3カ月以内に就職しない場合にはOPT資格を喪失します。実習が決まったら学校に伝え、SEVIS情報を必ずアップデートしてもらうようにしましょう。OPTで雇用してもらった会社で実習や見習い期間を経た後、正式雇用としてH1-Bビザなどの就労ビザに切り替えるケースもありますので、OPTを上手に利用してアメリカでの就職の道を切り開くこともできますでの、大いに活用しましょう。
Q11. アメリカでのビザの種類について教えてください。
アメリカのビザは大きく分けると「非移民ビザ」と「移民ビザ」に分けられます。「非移民ビザ」は長期に渡る滞在に必要なビザで、就労や留学など滞在は一時的なもとで日本に帰ることが前提となります。「移民ビザ」は永住権(グリーンカード)のことで、アメリカに定住する意思のもと、取得すると永久的にアメリカに居住することが許可されます。(例外あり)
A. 外交官、各国政府職員等
B. 商用、観光による短期滞在者
C. 通過ビザ(Transit Visa)
D. 船舶、航空機の塔乗員
E. 通商条約に基づいた貿易、投資
F. 留学生
G. 国際機関に勤める者
H. 一時的な就業(専門職等)、訓練
I. 外国報道関係者
J. 交換プログラム外国人
K. 米国市民の婚約者
L. 同系企業転勤者
M. 職業訓練のための短期留学
O. 科学、芸術、スポーツ等の分野で 卓越した能力を持つ者
P. 芸術家、芸能人、スポーツ選手
Q. 国際文化交流に参加する者
R. 宗教関係者
Q12. H-1Bビザとはどういうビザですか?
H-1Bビザは専門職ビザとも言われており、医者、アナリスト、会計士、コンピューター・スペシャリスト等、“専門技術者”として米国に一時的に滞在する場合を対象としたビザで、雇用主となる企業や団体が移民局に申請します。ビザの期間は、延長も含めると合計6年間のアメリカ滞在が可能です。H-1Bビザを申請するためには条件があります。まず学士号以上を持っていること。またはその分野での経験実績が学士号に相当することが必要です。また専攻学科(Major)や職務経験がH-1Bの職種と関連があることが必要です。H-1Bビザ申請には年間発給数に制限があり、通常申請枠6万5千件、アメリカ教育機関で修士号以上を取得した外国人には別枠で2万件が発給されます。
Q13. 現在アメリカに留学していますが、アメリカにいながらH-1Bビザを申請することはできますか?
アメリカに滞在可能な何かしらのビザを持っている場合、就労ビザなど他のビザに変更することをChange of Statusといいます。例えばF-1(学生ビザ)からH-1Bビザへ変更したい場合には、アメリカ国内にて手続きをすることが可能です。ただし、非移民ビザの種類によってはChange of Statusができない場合がありますので、移民法の弁護士にご相談ください。
Q14. 日本の就業規則のようなものはアメリカにはありますか?
「従業員ハンドブック(Employee Hand Book)」があります。この従業員ハンドブックは法的に義務付けられたものではありませんが、会社のルールやポリシーの周知徹底、人事管理に役立ちます。従業員ハンドブックのある企業では、従業員全員が持ち、全従業員に対して等しく適用させる社内文書です。この従業員ハンドブックは法律の改正などで変更があった時には、改定されその都度従業員に配布されます。盛り込まれる内容としては、会社の理念やポリシー、就業規則、倫理規定、残業規定、有給休暇、休日、福利厚生などが盛り込まれています。
Q15. ジョブ・ディスクリプションとは何ですか?
ジョブ・ディスクリプション(Job Description)とは、日本語でいうと職務内容記述書のことです。通常は企業は募集の際にジョブ・ディスクリプションを的確な人材を採用するために作成します。内容は、職務内容、その業務を遂行するために必要な知識や技術、学歴、資格について等。また、ポジションがエクゼンプト(Exempt)なのか、ノン・エクゼンプト(Non Exempt)なのかを明記されています。また、職務遂行に必要とされる身体的条件や、「このポジションは常時50パウンドの荷物の持ち運びを要求されるなど、就労環境などが記載されていることがあります。記載は、入社後に企業と従業員との間のミスコミュニケーションを防ぐためにも大きな役割を担います。
Q16. ExemptとNon-Exemptの違いはなんですか?
Non-Exemptの従業員はFLSA(Fair Labor Standard Act)にある法的要求事項の適用から除外を受けていない従業員のことをいい、ExemptはFLSAにある法的要求事項の適用から除外を受けている従業員を指します。Exemptと認定された従業員はMinimum WageおよびOvertimeの規制を受けなくなります。
Q17. アメリカの企業にはどのようなベネフィットがありますか?
アメリカではベネフィットは報酬の一部として考えられています。内容としては、有給休暇、病気休暇(州によっては強制)、医療保険、退職者年金積立制度等が基本となりますが、教育費の補助、社交活動、フレックスタイムの制度などを導入している企業もあります。従業員の満足度を高めるため、従業員のニーズに合った魅力のあるベネフィットを企業は提供しています。
Q18. 現在勤めている会社に辞意はいつ伝えたらよいでしょうか?
アメリカにおける雇用は、ほとんどの州でEmployment at will関係が基本となっています。従業員は理由がなくてもいつでも会社を辞めることができます。この雇用関係は企業側もまた、いかなる理由においても、また理由がなくても従業員を解雇できるというものです。辞意を伝えるためによく聞かれる2週間前の通知などの事前通知は、特別な契約していない限りは法律上は必要とされません。ただし、2週間前に辞表を提出し、引継ぎなどをしてから退職する方が多いように見受けられます。
Q19. 現在H-1Bビザで働いています。転職する際に気をつけたほうがよいことは?
H-1Bビザで就労しているが転職する場合には、新しい雇用主がH-1Bの延長と雇用先の変更手続きを行わなければいけません。その場合、H-1Bビザの年間発行枠とは関係なくいつでも申請することが可能です。また、移民局が申請書を受理した日から新しい雇用先で就労することが可能です。移民法の弁護士にご相談ください。
Copyright ©QUICK USA, INC. All rights reserved
※記事内容に関してはU.S. FrontLineは一切の責任を負いかねます。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします