キリスト教の聖地であるスペインには、フランス各地からピレネー山脈を経由してスペイン北部を通るサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路があり、日本にも弘法大師ゆかりの八十八の札所寺院を巡る四国霊場八十八箇所霊場遍路などがある。カリフォルニアはそういう歴史的、または宗教的な片鱗が最も希薄というイメージだが、唯一、スペイン伝道師によってサンディエゴから始まってサンフランシスコのソノマにかけて建てられた21箇所の歴史的建造物「ミッション」がある。
各々のミッションは1日で歩ける距離にあり、それを結ぶ道は” El Camino Real” (The King’s Highway, 王の道)と呼ばれていて、ハイウェイを走っていると時々、それを示す看板を目にすることがある。日本のガイドブックにはほとんど紹介されていないので、今回はロサンゼルスから簡単に行くことができるミッションを紹介する。
サンタ・バーバラ・ミッション “Queen of the Mission”
ロサンゼルスから北に2時間弱、映画「サイドウェイズ」でも有名になったサンタ・イネス、ロス・オリヴォスそして異国情緒たっぷりなソルバングなど、見所満載のサンタ・バーバラで、見逃せないのがこのミッションだ。
1796年7月14日、フランシスコ会修道士フニペロ・セラによってサンディエゴに初めて建設されたサンディエゴ・ミッションから数えて10番目のミッションだ。
サンタ・バーバラの滔々と広がる青海原と抜けるような青い空の下、サンタ・イネスの山々を後方にいただくこのミッションは、まさに「ミッションの女王」に相応しい佇まいだ。
サン・ブエナベンチュラ・ミッション “Mission San Buenaventure”
サンタバーバラからロサンゼルスに向かって30分のベンチュラの町にある、フニペロ・セラが最後に手がけた小ぶりなミッションだ。ベンチュラは絶好のサーフィンスポットとしても有名だが、元々はベンチュラ川とサンタクララ川に挟まれた肥沃な土壌に恵まれ、柑橘類の生産で世界最大だったところ。
今では裕福な郊外都市として、おしゃれなお店が立ち並ぶダウンタウンは、全てが新しいありきたりのショッピングモールと違って、生活の匂いと歴史を感じさせる。
サン・フェルナンド・レイ・ミッション “Mission San Fernando, Rey De Espana”
インターステイト405と、5と、118号線に挟まれたちょうど3角地帯の真ん中にところにあり、ロサンゼルスからも簡単に行けるのがサン・フェルナンド・レイ・ミッションだ。1797年に建てられ、当時最も大きな市場だった、Pueblo de los Angelesに通じる幹線道路沿いにあったため、大いに繁栄し旅人の宿泊施設としても利用された。地の利が良く訪問者が多いためか、他のミッションと比較しても最も綺麗で、良く整備されているミッションだ。地下にはワインセラーが当時のまま残っていて、ちょっとしたミュージアムもある。
サン・ガブリエル・アルカンヘル・ミッション “Mission San Gabriel Archangel”
最初に造られたサンディエゴから2年後の1771年に造られたミッションで、ロサンゼルスのダウンタウンからは最も近いところにある。スペイン統治時代のこの地のガバナーだった、Felipe de Neveの公式文書によると、1781年9月に44人の在住者と4人の軍人がここ、サン・ガブリエル・ミッションに集まって、ロサンゼルス市を正式に発足させたとある。
ちなみにロサンゼルスの名の起源は2つの説があり、1つは歴史家のDoyce P. Nunisの1785年の地図に記載された” The Town of the Queen of the Angeles”(El Pueble de la reyna de los Angeles)が元だ というもの。もう1つは考古学者 Frank Weberの説で、その地図は誤りなので”Our Lady of The Angeles”が、Los〔冠詞) Angelesの起源として正しいというもの。いずれにせよ、ここサン・ガブリエル・ミッションはロサンゼルス発祥の地と言えるのではないか。
サン・ファン・カピストラノ・ミッション “Mission San Juan Capistrano”
ロサンゼルスから南に60マイル、約1時間のドライブ、オレンジ郡で一番古い町サン・ファン・カピストラノにあるミッション。町の起源は今から230年以上前の1776年、ここにミッションが出来た時にさかのぼる。1812年12月8日、ミサの最中にサン・ファンの街を大地震が襲い、石造りの大聖堂を破壊、同時に40人の命を奪ってしまった。今なお、その爪跡を観ることができる。サン・ファン・カピストラノはカリフォルニアの宝石を言われるだけあって、どこを撮っても絵になる、写真家には百撮の価値あり!
サン・ルイス・レイ・ミッション “Old Mission San Luis Rey de Francia, King of the Mission”
ロサンゼルスとサンディエゴのちょうど真ん中のオーシャンサイドにあるカリフォルニア・ミッションの王と呼ばれるミッション。1769年7月14日、18番目のミッションとして建設された。サンタ・バーバラはミッションの女王だが、こちらはミッションの王と呼ばれるだけあり、敷地も広く大きくどっしりとしている。当時最大の規模を誇り95万エーカーの敷地に3,000人のネイティブアメリカンが居住していた。当時の洗濯場、住居の跡地などを観ることできる。
ミッション・サンディエゴ・デ・アルカラ “Mission Basilica San Diego de Alcala”
ミッションの母と呼ばれるだけあって、カリフォルニアにある21のミッションの中で最も古くフニペロ・セラ神父によって1769年7月14に設立された。最初のミッションは、5マイル離れた湾が見渡せる場所にあったが土地が痩せており水の供給も悪かったため現在の場所に5年後に移設された。現在の建物は1813年のそれを模して1931年に再建されたものだ。
フニペロ・セラ神父は1769年7月1日に219人のスペイン人を引連れてメキシコのバハ・カリフォルニアを出航し、ここサンディエゴに上陸しサンディエゴ・デ・アルカラ・ミッションを設立し、サンフランシスコのソノマまでの600マイルに及ぶ El Camino Real(王の道)を造り、多くのミッションを建設した。一方でネイティブアメリカンに対しては数々の残虐行為が記録されており、スペイン人のカリフォルニア統治期間にネイティブアメリカンの3分の1から4分の1が死んだと言われている。 ロサンゼルスの小学校ではカリフォルニアの歴史教育として、親同伴でミッションに行くことを授業の一環としている所も多い。子供に言われて、ミッションって何? では親の面目まる潰れだ。ミッションの周りにはワイナリーも多い。ワイン・テイスティングも兼ねてミッション巡りをされみてはいかが?
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします