軍事オタクじゃなくても楽しめるミリタリー博物館 Part2

文&写真/関克久(Text and photo by Katsuhisa Seki)

オリジナルの栄エンジンで飛行可能な零戦

前回Part1でご紹介したのはニューヨークの陸軍士官学校ウェストポイント、イントレピット海上航空宇宙博物館、そしてパール・ハーバーにある戦艦ミズーリ記念館。それに続き、今回紹介するのはロサンゼルス郊外のプレインズ・オブ・フェイム・エアー・ミュージアムだ。

今も飛行可能な零戦が見られるプレインズ・オブ・フェイム・エアー・ミュージアム

百田尚樹さんのベストセラー『永遠のゼロ』の映画化もあって、零戦の話題が新聞をも賑わすようになったが、戦時中に1万400機も製造された零戦の原型を保つ機体は世界に30機足らずしかない。そして現在も飛行可能な零戦はたったの5機のみ。その中でもオリジナルの栄発動機で飛行できる機体は世界でただ1機だ。それがロサンゼルス郊外のプレインズ・オブ・フェイム・エアー・ミュージアムにある。

修復中のB17 が展示されているプレーンズ・オブ・フェイム・エアー・ミュージアム

ここには巨大なハンガーが4庫、それぞれに10機ほどの第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争で実際に使われた戦闘機が展示されている。いずれも飛行可能な状態に整備されてピカピカに磨かれて展示されているから驚きだ。

North American Aviation MUSTANG P-510-30-NT

世界に3機しかないBoeing P-26A Peashooter

これが、世界で唯一オリジナルの栄発動機で飛行可能な零戦。Mitsubishi A6M5 Reisen(と書かれてある)。1943年5月に製造された2357番目の機体No.61-120だ。1944年6月18日に連合国海軍が捕獲した十数機の中の1機で、メリーランドのNASに送られ25名以上のパイロットが190時間以上かけてテストし、あの大西洋横断飛行を成し遂げたリンドバーグ氏もテスト飛行をした機体だ。

現存する唯一飛行可能なMitsubishi A6M5 Reisen

栄エンジンは整備されていて、機体の下にはオイルパンが敷かれている

ファン必見! 空中戦も実演されるエアショー

毎年5月に行われるエアショーでは、第二次世界大戦中に活躍したマニア垂涎の戦闘機がズラリと展示され、次々に大空に飛び立ち、そして実際に空中戦を行う。

写真愛好家のためにマスタングの前で当時のコスチュームを着てポーズをとってくれるモデルさんも登場する。

マスタングの前でモデルさんがポーズをとるサービスも

このエアショーの目玉の1つは零戦。今年のエアショーでは、オリジナルの栄エンジンの61-120機に加えて、サンタモニカ航空博物館所有の零戦22型、X-133機(エンジンはP&Wのアメリカ製)、映画『ミッドウェイ』の撮影のために改修されたVultee BT-13 Valiantもお目見えし、全部で3機の零戦が実際に飛行した。

零戦61-120機とX-133機

零戦に改造されたValtee BT-13 Valiant

空中戦では何故かいつも白煙を上げるのが零戦というのは、アメリカのエアショーだから仕方がない。

F4U コルセアと零戦

飛行はしなかったが、1970年代にニューギニアで発見され1990年代にロシアで修復された零式艦上戦闘機22型 三菱3858号、機体番号AI-112も展示されていた。実際にコックピットに座る事もできる。

ロシアでレストアされた、AI-112機

零戦は靖国神社の遊就館をはじめ各地の博物館に展示されているが、4機もの零戦が一度に見られ、しかも3機が第二次世界大戦中の名だたる戦闘機と編隊飛行を繰り広げるとあっては、世界各地からファンが訪れるというのも納得。どでかいエンジンを積んで見るからにぶ厚い装甲でがっちりしたグラマンに比べると、零戦はまるでトンボのようにか細くて華奢な機体に見える。しかし飛行している姿を見ると、グラマンはパワーで飛ばされている感じがする一方で、零戦は水を得た魚のようにスイスイと飛んでいる感じだ。派手なイラストで装飾された機体が多いなかで、日の丸だけのシンプルな零戦はやはり美しいと思うのは日本人だけだろうか? 来年の5月は是非訪れてみてはいかが?

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関克久 (Katsuhisa Seki)

関克久 (Katsuhisa Seki)

ライタープロフィール

旅行のプロデュースに携わって30年。趣味は写真。「百聞は一旅に如かず」旅に出て初めてわかるのは、実は故郷の良さなのかも知れません。「旅は百薬の長」、皆さん旅に出ましょう!

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