Spirit of the West といわれるワイオミング州の知られざる見どころは?

文&写真/関克久(Text and photo by Katsuhisa Seki)

イエローストーン国立公園

ワイオミング州というと何を思い浮かべるだろうか? まずは、世界初の国立公園イエローストーン、アメリカで一番美しいといわれるグランドティートン、いずれも一度は必ず訪れてみたい国立公園の代表格だ。

ワイオミング州は全米9番目の広大な土地に、全米でもっとも少ない56万人しか住んでいない。ということは本州と四国を合わせた土地に東京都杉並区の人口の人しか住んでいないということになる。大昔、広大な荒野を舞台にした西部劇で『ララミー牧場』というテレビ番組があったが、まさにそのイメージがワイオミング州、Spirit of the Westといえるかもしれない。今回は、前述の2つの国立公園以外の知られざるワイオミングの見どころをご紹介する。

ラピッドシティ周辺には見どころがいっぱい

コチャックファミリーが寄付金だけで作っているクレイジーホース記念碑

イエローストーン国立公園へは、ソルトレイクシティから北上してグランドティートンを抜けて行く方法と、サウスダコタ州のラピッドシティから90号線を西に向かって行く方法が一般的だが、もし時間に余裕があれば後者をおすすめしたい。

その理由は全米でも有数の美しい景観を誇るニードルス・ハイウェイや、アメリカの象徴ともいえるマウントラシュモア、そしてそのすぐ近くに完成まであと数十年かかるといわれているクレイジーホース記念碑、映画『未知との遭遇』の舞台になったデビルスタワーなどなど、見どころが目白押しだからだ。

デビルスタワーは、ロッキー山脈の麓に広がる広大な草原地帯に忽然と聳え立つ巨岩で、高さは東京タワーを凌いで386メートルもある。約6千万年前、ロッキー山脈の造山活動に併発した火山活動で地下のマグマが堆積岩を突き破って上昇。その後のロッキー山脈の隆起活動で周辺の台地が隆起し、塊の周囲のやわらかい堆積岩が徐々に侵食されてこの巨大な溶岩の固まりがそのまま残ったのだそうだ。地元のインディアンの言い伝えでは、垂直方向に走る筋は巨大な野生の熊の引っ掻き傷とのこと。今もインディアンの聖地とされていてトレイルから中に入ることはできない。

マウントラシュモア国立記念公園

ニードルスハイウェイにあるニードルズ・アイと呼ばれる岩山。針の穴のような形をしている

インディアンの聖地デビルスタワー

バッファローからは古き良き時代を楽しむ

1880年に建てられた由緒あるオキシデンタルホテル

さて、これらの見どころを満喫してイエローストーン国立公園に向かうのだが、その途中にも実は見どころが多い。

まずは、90号線と25号線が交わる町、バッファローにあるオキシデンタルホテル。バッファローは人口4590人しかない田舎町だが、最近はシェールガス採掘で活気を取り戻している。

1880年に建てられたこのホテルは、どこにでもある田舎のホテルといった外観だが、ロビーに入った瞬間、西部開拓時代にタイムスリップしてしまう。調度品すべてがその時代のオリジナルばかりか、漂う空気が1世紀前そのものなのだ。宿泊する時間がなくても、この辺りではピカ一のレストラン「The Virginian」でぜひ食事を楽しんでみよう。バーの雰囲気や、金庫の中にあるテーブルなど一見の価値は大ありだ。

金庫の中に造られた洒落たテーブル席

バッファローから北に45分ほどでシェリダンの町に着く。人口1万7000人弱で大学、病院、お店が立ち並ぶ商店街もあり、この辺りでは中心の町でもある。ホテルも多いが、せっかくワイオミングに来たならありきたりのチェーンホテルではなく、牧場ランチに宿泊してみたい。バッファローとシェリダンの間に、ユークロス(Ucross)という町がある。町といっても人口25人足らず。14号線と16号線が交わることから“You Cross”と名付けられたところだ。

牧場をホテルに改修した「Ranch at Ucross」でカウボーイ体験はいかがだろう? ランチといってもレストランや施設は充実していて、ヨーロッパからの富裕層グループもイエローストーンに行く途中でこのランチでの宿泊を日程に組み込んでいる。

ヨーロッパの富裕層に人気のUcross Ranch

Ucross Ranchでの乗馬体験も人気

カウボーイ文化や第二次大戦時を学べるコーディへ

見ごたえ十分のバッファロー・ビル・センター

さて、いよいよイエローストーンに向けて出発となるが、途中、雄大な大自然の景観を満喫できるビッグホーン国立森林公園を通り抜けて行く。時としてエルクの群れに出会うこともある。

ビッグホーン国立森林公園で遭遇したエルクの大群

ビッグホーンを抜けるとイエローストーンの玄関口、西部開拓時代のカウボーイ文化を今なお色濃く残す町、コーディに着く。

人口9千人足らずだが、カウボーイブーツの専門店やインディアン民芸品などのお店があり、カウボーイがカウンターに陣取る昔ながらのバーなどが軒を連ねている。ここで見逃せないのがバッファロー・ビル・センターだ。

バッファロー・ビルことウィリアム・フレデリック・コディの生涯や西部開拓時代の人々の生活、歴史を展示してある「バッファロー・ビル・ミュージアム」、イエローストーンの自然を学べる「ドレイパー自然史博物館」、ウェスタン・アートを展示した「ホイットニー・ウェスタンアート美術館」、そしてありとあらゆる銃器を展示している「コディ・ファイヤーアームズ博物館」などが主なもの。

いずれも充分な見ごたえがあるが、人口9千人の町でこんな立派な博物館があるとは驚きだ。特にファイヤーアームズ博物館は世界でもっとも充実したコレクションを誇り、7000丁ものライフルやピストルが展示されていて、コレクターには垂涎の博物館だ。

イエローストーンの入り口の町コーディ

販売収益のすべてが寄付金となるウィンチェスター記念モデル

 

そしてコーディで見逃せないのが、ハートマウンテン・リロケーション・センター。第二次世界大戦時に造られた日系人の強制収容所だ。カリフォルニア州のマンザナーが有名だが、収容所は全米で12カ所に建設された。

ここハートマウンテンには1万541人の日系人が収容されたが、当時のコーディの人口は3000人強なので、町の人口は一挙に4倍に膨れ上がったことになる。今は建物の跡形はないが、センター内には木材がむき出しの8畳間ほどの部屋が再現してある。当時どんな生活をしていたのかを伺い知れる写真の数々が展示されているが、すべてを失った窮乏生活のなかでも子どもたちの明るい笑顔には胸を打たれるものがある。

主に有志の寄付でできたこのセンターは、ワイオミング州の住民にとっては自慢の場所であると同時に、移民の国であるアメリカ人にとっても人事ではなく大きな意味を持つ。ましてや日本人にとっては知っていなくてはならない歴史の一コマ。コーディといえばロデオ・ショーが見逃せないが、ハートマウンテン・リロケーション・センターにもぜひ足を運んでみて欲しい。

ハートマウンテン・リロケーション・センター

再現された収容所の様子

リロケーション・センターから眺望するハートマウンテン

ワイオミング州は広大な土地と豊かな自然、そしてその開拓の歴史など、まさにSpirit of the Westそのもの。イエローストーンに2、3日プラスする価値はある。格段に充実した旅になること間違いない。

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関克久 (Katsuhisa Seki)

関克久 (Katsuhisa Seki)

ライタープロフィール

旅行のプロデュースに携わって30年。趣味は写真。「百聞は一旅に如かず」旅に出て初めてわかるのは、実は故郷の良さなのかも知れません。「旅は百薬の長」、皆さん旅に出ましょう!

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