【ニューヨーク不動産最前線】
物件購入時は維持費に注目

今年も残すところ1カ月を切りました。完全復活とはいかないまでも、コロナで街から人が消えた昨年からは想像できないほどマンハッタンに活気が戻っています。クリスマスマーケットも再開されてホリデーモードを盛り上げています。例年ならこの時期はスローになる不動産マーケットも、今年に限っては去年の反動からか、セール・レンタルともに需要がまったく衰えていません。そこで、今回は物件購入時のワンポイント・アドバイスです。

物件購入の時に重要なファクターとなるのは、毎月の維持費です。マンハッタンは物件価格のみならず、維持費が高いことでも知られており、維持費の目安はスタジオで1200ドル以上、1BRで2200ドル以上、2BRで3000ドル以上というところです。

維持費の内訳はコモンチャージ(管理費)と固定資産税で、購入時にはこれらの数字に注目してください。購入価格が安くても毎月の維持費が高いと良い買い物とはいえませんね。今回はこの維持費の見方についてのお話です。

コモンチャージはビルによって特色の出る数字です。ビルの管理に関する費用のため、ビルのグレード、規模、築年数等によって差が出てきます。運営がうまくいっていて運営資金がふんだんにあるビルの場合はコモンチャージが安く設定されます。ただ、建物の修理や改装等いろんなプロジェクトを計画しているビルはコモンチャージが高かったり、スペシャルアセスメントがついていたりします。スペシャルアセスメントは、コモンチャージの値上げをする代わりに一定期間だけ(たとえばプロジェクトの間だけ)追加の費用が上乗せされます。これは強制的に加算されるので、毎月の維持費が高くなる要因です。古い物件は近い将来何らかの修理プロジェクトが計画されている可能性が高いので、物件の購入前にスペシャルアセスメントが計画されているかどうかも分かれば資金計画の助けになりますね。また、特定のプロジェクトがなくてもビルの運営資金が少ない場合は一時的にスペシャルアセスメントが課される場合もあるので、ビルの資産状況を調べるのも重要です。これは売買契約書のサインの前に買主弁護士が調べます。

固定資産税は毎年7月にニューヨーク市の毎年の査定額によって決められますが、これは条件を満たせば割引が受けられます。高齢者割引、自己使用割引等が代表的なもので、割引が適用されれば月に数百ドルセーブできます。通常売り物件の広告に出ている数字は割引前の正規の数字が出ているはずですが、売り手によっては自分が割引を受けているかどうか分からずに現在支払っている数字をそのまま載せている場合があるので要注意です。必ずしも広告に出ている数字が買い手に当てはまるわけではありません。たとえば、オーナーが自己使用していた物件を買って、買い手が自分で使わずに賃貸に出すような場合は、自己使用割引が受けられません。広告に出ている数字が満額なのか割引後のものなのかは、あなたのブローカーに聞けば調べてくれます。

物件価格だけでなく、毎月の維持費とのバランスの取れた物件を探すのが鍵です。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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