アートと愛の溢れる町
ペンシルバニア州フィラデルフィア

アメリカで6番目に人口が多く、ニューヨークからも車や鉄道で1時間半ほどの所にあるのに、日本の方にあまりなじみのない観光都市がある。フィラデルフィアだ。アメリカという国が独立、発展していくなかで大きな役割を担ってきたこの町を、映画とともにご紹介したい。

『ロッキー』の舞台、「フィラデルフィア美術館」

フィラデルフィアと聞いて多くの人がまず思いつく映画は、1977年アカデミー作品賞の『ロッキー』だろう。名もないボクサーがひょんなことからタイトルマッチの相手に指名され、チャンピオンと激闘を繰り広げる映画だ。ロッキーが町を走るシーンは特に印象深い。

フィラデルフィアの庶民の代表ともいえる彼の家があるのは、町のかなり南の、高級とは程遠い地区。そこから鉄道の線路、貨物船の集まる港、イタリア人地区の商店街などを走り抜け、川沿いの美しいフェアモントパークやCenter Cityと呼ばれる中心部を通り、町の西側にあるフィラデルフィア美術館へと向かう。

頂点に向かっていくロッキーの将来を暗示するかのように、美術館の前の階段を一気に駆け上がり、拳を上げてフィラデルフィアの町を見下ろす。このいわゆる「ロッキー・ステップ」を駆け上がることと、階段の向かって右側にあるロッキー像と写真を撮ることは、フィラデルフィア観光の目玉となっている。

フィラデルフィア美術館をこの階段だけで終わらせるのはもったいない。アメリカ建国100周年の1876年に開館したこの美術館は、ゴッホのひまわりをはじめとするヨーロッパの絵画、日本の茶室、インドのガネーシャの像など幅広い展示物がある。また、ロダンの彫像を集めたロダン美術館や植民地時代の家屋を保存した別館も、本館のチケットがあれば無料で見ることができ、1日では時間が足りないほどだ。

「愛」の町フィラデルフィア

トム・ハンクス演じるエイズにかかった弁護士が、自身の病気やそれに対する差別と闘っていく映画『フィラデルフィア』(1993年)。ブルース・スプリングスティーンの哀しげな音楽とともに、空撮を駆使したオープニングの高層ビル群が印象的だ。レコード針のような形の建物や威厳のある市庁舎など、フィラデルフィアにはユニークな建築物が建ち並ぶ。

映画には、同性愛、家族愛、人間としての愛の形がさまざまに表現されている。それもそのはず、Philadelphiaの由来はギリシャ語で、Philは愛、adelphiは兄弟・姉妹の意味。フィラデルフィアにはCity of brotherly love(兄弟愛)という愛称があるほど、愛にゆかりのある町なのだ。市庁舎のほど近くにあるJFKプラザは別名“LOVEパーク”ともいわれ、「LOVE」の文字をかたどったパブリックアートがある。こちらも人やアートを愛するフィラデルフィアらしい場所だといえる。

酒場でほろ酔い

フィラデルフィアの人の愛はビールにも注がれている。2011年には町の名前を文字って、『Beerdelphia』というドキュメンタリー映画が作られたほどだ。今もっとも注目のクラフトビール「YARDS」は、町の北側に工場を構える。できたものはすぐ飲んでくれ!と言わんばかりに、工場には出来立てのビールが楽しめるスポーツバーが併設されている。

さらに工場見学ツアーもある。入場料を払うとまず新種のビールを渡され試飲、ツアーが始まったら今度は好みの缶ビールを選んで試飲と、ビール三昧。ツアーでは、超が付くほどビール好きのガイドさんが、なんとビールを飲みながら工場を案内してくれる。参加者もビール好きなので、ちょっと白熱したビール議論も交わされたりする。

労働者の町フィラデルフィアには酒場が多く、ビールだけでなくお酒全般が好きなようだ。『It’s Always Sunny in Philadelphia』(2005-2013)というTVドラマでは、そんな酒場での日常をコミカルに描いている。バーで働くオーナーとその従業員たちのなんとも言えぬ「兄弟愛」が見られる回も。バレンタインデーのエピソードでは、普段はまじめに働かない従業員たちが、オーナーのためにあることを企てる。オーナーは「真面目に働け、クビにするぞ」と言いながらも最後には……。フィラデルフィア人気質を表すこのエピソード、これは見てのお楽しみ。

スポーツに熱狂する

フィラデルフィアは、スポーツをとことん愛する町でもある。2012年の映画『世界にひとつのプレイブック』では、主演から脇役まで、どれだけNFLフィラデルフィア・イーグルスを愛しているか、その熱すぎるファンぶりが描かれていた。2018年のスーパーボウルで優勝してからは、さらにその熱狂ぶりが過熱しているようだ。

先日私がNFLシアトル・シーホークスの帽子をかぶって町を歩いていたところ、ほろ酔いのファンにまじまじと帽子を見られ、「何でシーホークスファンがイーグルスの町にいるんだ」とからまれたほどだ。大リーグのフィリーズ、NBAの76ERS、アイスホッケーのフライヤーズ、大学バスケのヴィラノバ大など、自慢の強豪チームがあり、スポーツ観戦を生で楽しむとともに、ファンの熱狂ぶりにも注目だ。

アメリカ史を物語るスポットが多数

フィラデルフィアは言わずと知れた、アメリカ独立宣言が署名された場所。ニコラス・ケイジ主演の『ナショナル・トレジャー』は、その独立宣言のオリジナルを盗み出すという話である。この映画には、ワシントン DC、ニューヨーク、ボストンなども登場するが、フィラデルフィアがとても重要な位置を占めている。自由の鐘、独立記念館、市庁舎、レディング・ターミナル・マーケットなど、フィラデルフィアを代表する観光地が立て続けに出てくるシーンはとてもエキサイティングで、アメリカ独立にまつわる歴史も実に興味深い。

地元民からは親しみをこめてPhilly(フィリー)やPhila(フィラ)と呼ばれているフィラデルフィア。町に溢れる愛は、映画で見るだけでなく、ぜひ全身全霊で体験してほしい。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る