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老後の日本帰国と帰化申請について
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2018年3月7日
長年米国に居住し、市民権を取得した人が老後の人生を日本で過ごすために帰国する場合、帰化(日本国籍の再取得)をどうするか悩むと思います。今回はその判断基準についてお話ししたいと思います。
まず一部に混同されている人がいるので説明しますと、「帰化申請」と「在留資格申請」は別手続きです。在留資格は日本国籍を持たない外国人が日本で中長期(90日以上)に渡って滞在する際に必要となるものです。米市民権を取得した人が日本で暮らすためには、在留資格を取得する必要があります。そして在留資格を取得後、住所登録を行う(住民票を取得する)ことで日本の居住者となります。そのうえで帰化申請するかどうかを考えることになるのです。
一つの判断基準としては、日本で暮らし始めた後も米国へ戻る(一時的な期間を含む)可能性があるかどうかが挙げられます。米国に戻る理由としては、たとえば
・就労の機会がある(米国内で事業経営している、就労先に復帰の可能性がある)
・米国に残した家族と定期的に会う
・米国内の保有資産(不動産など)を管理する
・日本の生活になじめずに米国生活に戻る
・米国で相続を行う
などさまざまですが、いずれ米国に戻る可能性があれば、市民権は保持しておいた方が良いかもしれません。なお、帰化しても3カ月までであればビザなしで米国を訪問することは可能です(注1)。
帰化申請手続きは帰国後法務省で行います。申請できる人の条件として、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」「20歳以上で行為能力を有すること」「素行が善良であること」「生活のための経済力があること」「帰化によって従前の国籍を失うこと」など何点かありますが、両親のいずれかが日本人である人、日本人と結婚している人などについては、一部の条件が緩和されます。手続きは大体以下の流れになります。
1.法務局での相談
2.提出書類の準備
3.申請、書類提出(居住地の管轄の法務局にて)
4.審査
5.結果の通知
審査については提出された書類の内容を確認するとともに、申請者の人物を見るための面談を行います。元々日本国籍の人であれば大体の方が帰化できるようです。この面談は場合によっては複数回行われることもあり、結果の通知まで半年~1年程度かかります。審査期間中でも米国へ行くことは可能ですが、事前に申告する必要があり、また取得した在留資格の有効期限内に帰国しなければなりません。
一般的な帰化のメリットとして、日本名、戸籍、日本のパスポートを持つことができる、選挙権を得ることができる、ローンなどが組みやすくなるといったことが挙げられます。また興味深い情報として、日本のパスポートはシンガポールと並んで最強のパスポート(相手国の査証なしで入れる国の数によるランキング2018年版)として取り上げられています(コンサルティング会社Henley & Partners発表)。
日本では二重国籍は認められていませんので、帰化申請後は米国大使館で米国籍の離脱手続きを行います。なお、以下の手続きについては国籍要件がありませんので、在留資格取得後に住所登録をすれば帰化しなくても利用することができます。
・医療保険(国民健康保険)、介護保険などの社会保障。ただし同時に毎月の国民健康保険料、介護保険料の支払い義務が発生します。
・銀行口座の開設
・マイナンバーの付与 など
また米国籍であれば、日本に居住していても米国での納税義務(申告義務)が発生します。日本で得た給与収入や金利収入など、源泉徴収される所得については日米租税条約により還付されます。
余談になりますが、米市民権を取得された際に日本国籍を離脱していない人(日本の戸籍が残っている人)については、原則はあらかじめ日本国籍の離脱手続きをすることになっていますが、そのまま元の戸籍で日本へ帰国しているケースもあるようです(注2)。
(注1)日本は米国のビザ免除プログラム(VWP)の適用対象国となっていますので、渡米目的が短期の商用や観光であれば、ビザなしで米国に90日以下の滞在が可能です。ただし、事前に電子渡航認証システム(ESTA)により渡航認証が承認されていることが求められます。詳細は米国大使館のウェブサイトをご参照ください。
(注2)本ケースについては、生活上何らかの問題が生じるかどうかの確認はしていません。このケースで帰国する場合はご本人が確認のうえ、自己責任でお手続きください。
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