意外に古い、ヘアカラーの歴史

ヘアカラーには約5000年もの長い歴史があります。今回は、手間のかかる大仕事から今日の手軽な毛染めへと発展した過程や、歴史上の人物にまつわる豆知識をご紹介します。

一日がかりの大仕事から、わずか5分に

紀元前3000年頃の古代エジプト時代は、植物や動物、鉱物といった身近な素材を使って髪を染めていたといわれています。あのクレオパトラやムハンマドも、ヘナで髪やヒゲを彩っていたのだとか。中世から近世にかけても、ヘアカラー事情は大きく変わりません。身の回りの素材を使って髪を染めるのは一日がかりの大仕事でしたが、そのわりに十分な染毛効果を得ることができませんでした。

染毛の歴史を大きく発展させたのが、酸化染料の登場。酸化染料は19世紀後半にヨーロッパで発見され、明治時代末期には日本に紹介されました。酸化染料の特徴は、染料の分子が小さいため髪の内部にまで浸透しやすいこと。かつて一日がかりだった白髪染めは2~3時間の手間に短縮され、さらなる技術の進歩によって、今ではわずか5分で染めることができるようになったのです。

マリー・アントワネットは一夜にして白髪になった!?

フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネットには、「処刑されるショックで一晩のうちに髪が真っ白になった」というエピソードがあります。これは事実でしょうか。

以前お伝えしたように、髪の色は毛根で作られるメラニン色素の種類と量によって決まり、いったん生えた髪の色はその後もほとんど変化しません。白髪は何らかの原因によって、毛根でメラニン色素が作られなくなり、色素を持たないまま頭皮の表面まで伸びてきた髪。毛根でメラニン色素が作られなくなる理由はまだ完全には解明されていませんが、遺伝や加齢とともにストレスも大きな原因だと考えられています。

記録によると、牢獄に移されてから約2カ月後に処刑されたマリー・アントワネットは、髪が短かったそうです。恐らく牢獄生活のストレスで白髪が増え、さらに処刑の前に短髪にしたことで、突然白髪になったように見えたのではないでしょうか。

くり返し、キレイなヘアカラーをするために

一度ヘアカラーをした後も、新しく伸びた白髪の根元をきれいに染めたい、また次回明るく染めたい時のコツをご紹介します。

1.まずは全体染めから
全体染めと部分染めをうまく使い分けることで、髪への負担を減らします。初めて白髪用ヘアカラーを使う時やしばらく染めていなかった時は、まず全体染めをしましょう。

2.部分染めで髪色をキープ
新しく伸びてきた白髪を部分染めすることで、髪への負担を減らしながら全体の髪色を保つことができます。全体染めの色が落ち始める2~3カ月後までに部分染めを2~3回繰り返した後、全体の色みを整えたり、部分染めでは塗りにくい後頭部の白髪をしっかり染めたりするために、再度全体染めをします。

3.ヘアサイクルに合わせたお手入れ
髪の毛は1カ月で約1~1.5cm伸びます。伸びてきた白髪が目立つ1カ月くらいのタイミングで染め直しましょう。定期的なヘアカラーをすることが、きれいな髪を保つポイント。

4.次回、明るく染めるコツ
次の全体染めでより明るく仕上げたい場合は、明るい色番を選びましょう。また、明るくなった髪色を暗くなり過ぎないよう落ち着かせたい場合には、ヘアカラーの放置時間をやや短めにするのがおすすめ。

毛髪のダメージ程度によっては、非常に染まりやすくなることがあります。この場合、染まりやすく退色もしやすい状態なので、染毛直後は暗く見えても1週間ほどで希望の明るさになることもあります。まずは1週間ほど様子を見ましょう。

毛髪スペシャリスト 高橋恵子
東京都生まれ。ホーユーアメリカのR&D研究員。アメリカを中心に、北中南米のヘアカラー、ヘアケア商品の開発に従事。毎日、さまざまな人種の髪で新商品をテストしている。趣味は読書とパン作り。

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