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離婚時の年金の取り扱いについて(離婚時の厚生年金の分割)
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2018年11月10日
家族に関わる年金として、これまで加給年金(家族年金)、遺族年金を紹介しましたが、今回は夫婦が離婚してしまった場合の年金の取り扱いについて紹介します。
子育てを終え仕事もリタイアし、これから第二の人生へ……、という時に離婚を選択されるご夫婦もいらっしゃることでしょう。または、まだ現役で働いている人や子育て中の若い世代の人の中にも、さまざまな事情により離婚を余儀なくされてしまうご夫婦もいらっしゃると思います。離婚した場合の日本の年金の取り扱いはどうなるのでしょうか?
厚生年金は労働者(世帯)、国民年金は国民(個人)のためのもの
→ 厚生年金は夫婦共有
もともと年金は個人に給付されるものなので、以前は離婚しても夫婦それぞれの年金については継続して支給され、何も変わりませんでした。ただし厚生年金に加入されていた方、たとえばサラリーマンや公務員をされていた方については、老後に受給する年金原資の一部を離婚時に配偶者に移行するという制度が2007年に始まりました。
日本の年金は全国民が加入する国民年金(基礎年金)と、サラリーマンや公務員が加入する厚生年金の2階建てで構成されますが、離婚すると2階部分の厚生年金の一部が分割され、配偶者に移行することができます。この場合、1階部分の基礎年金は何も変わりません。
すでに年金を受給している場合はその時点から年金額が変わりますし、まだ年金を受給する前の年齢であれば、将来の年金受給額の計算の元となる部分(対象婚姻期間の標準報酬総額)が変更されます。
こうした考え方ですが、厚生年金は労働者(世帯)、国民年金は国民(個人)の生活を支えるという目的から来ています。
たとえば一般的な世帯として、“夫:サラリーマン、妻:主婦”の家庭を考えてみてください。サラリーマンである夫は自動的に勤務先企業経由で厚生年金に加入します。企業からも補助を受けて厚生年金保険料を納付していた夫の老後の年金は、「厚生年金」と「基礎年金」の合計となります。
一方、外で働く夫を家庭で支えていた妻は厚生年金に加入するわけではなく、主婦として国民年金に加入することになり、妻の老後の年金は「基礎年金」のみとなります。もし2人が離婚した場合、年金部分については夫(厚生年金+基礎年金)と妻(基礎年金のみ)で大きく差がついてしまいます。
確かに妻は就労せず厚生年金には加入していませんでしたが、夫が外で働いている間家庭を守り、夫を支えてきたわけで、これでは報われません。そこで夫の厚生年金部分は夫婦共有のものということで、分割することができるようになりました。
按分割合は夫婦の厚生年金を折半
離婚時の分割割合(按分割合)については夫婦協議のうえ指定できましたが、2008年4月以降の年金部分については、妻からの申請だけで按分割合を夫婦同額(50:50)とすることができるようになりました。前述の通り対象は厚生年金部分だけですので、基礎年金部分は分割の対象にはなりません。
なお、妻も働いて厚生年金に加入していた場合は妻の厚生年金も分割の対象になるので、夫婦の厚生年金の合計を折半することになります。したがって、たとえば夫婦の所得が同じで厚生年金保険料の累計支払額が同じであれば、分割は行われません。
手続きは離婚後2年が経過するまで。離婚前に試算も可能
申請手続きですが、離婚後すぐに分割請求手続きを行うこともできますが、分割するとそれぞれの年金額がどれくらいになるのかを年金事務所に調査(試算)してもらうこともできます(離婚前でも単独で可能)。これなら調査結果を見て、離婚を思いとどまるという判断もできますね。
分割請求手続きは離婚後2年を経過すると行えません。2年以内の手続きが必要です。実際の離婚手続きについては慰謝料、子供の親権、所有資産の分割などいろいろな面で話が揉めることが多く、あっという間に時間が経過してしまいます。年金分割について後回しにしていて、気がついたら2年を過ぎていたということもありますので注意が必要です。
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