- Home
- ビジネス・社会
- 米国日系企業トップインタビュー
- GungHo Online Entertainment America, Inc. アメリカのビジネスは、今
GungHo Online Entertainment America, Inc.
アメリカのビジネスは、今
- 2018年12月7日
今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。
オンラインゲームの開発・運営を行うGungHo Online Entertainment America, Inc.のCEO岩崎 順さんに話を聞いた。
ゲームの開発について
最初にアイデアを出し、プランを提案します。それから大まかな概要が分かるプロトタイプを作り、その後に本開発となります。これまでには、2年ぐらいかけて作り込んだものでも本開発の最後の判断でキャンセルしたタイトルもあります。おもしろくないという判断で辞めたものもあれば、細かくチューニングしている間に旬がずれてしまい、市場にリリースするタイミングを逸してしまった場合もあります。
二番煎じにならないようにできる限り早く出したいという意向はあるのですが、早く出す=未完成の可能性もあるので、出して良いレベルかどうかを判断する際に、せめぎ合いというかジレンマはありますね。
アメリカ進出の経緯
私自身は、これまで広告代理店や大手ゲーム会社、ゲームライセンシングのサポートなど、さまざまな立場でゲーム業界に関わってきました。そんななか、当時クライアントだったGungHoとお付き合いがありました。のちのパズドラの発案者であり、現在もグループCEOを務める森下とお話しする機会があったんですね。
ちょうどその頃、GungHoは今後の市場展開としてアメリカ進出を考えており、私は当時の立場からステップアップを考えていました。じゃあ一緒にやりましょうということで、アメリカの事務所を一から立ち上げることになりました。
アメリカの事務所を立ち上げたのは2012年です。立ち上げ当初は、今より少し小さい事務所で4名くらいでした。現在は事務所を大きくし、開発チームのフロアも設置して、全部で40名ほどの規模となりました。
日米の違い
やはりゲームのニーズというのは違いますね。15〜20年ぐらい前は、日本のゲームパブリッシャーがアメリカの市場をほとんど占めていました。ですが、2000年に入ってからはアメリカのパブリッシャーが強くなってきて、今は米国市場のトップ(ランキング)パブリッシャーのほとんどがアメリカのパブリッシャーですね。
アメリカと日本で決定的に違うのは、ゲームのスタイルです。日本は物語を追っていくロールプレイングゲーム(RPG)が1番人気なのですが、アメリカは過激なシューティングゲームやスポーツゲームが主流なんですね。それが要因となり、徐々にアメリカの市場でもローカルのパブリッシャーが強くなってきたというところがあると思います。
昔は日本のゲームが主流だったので、どこのゲーム会社も「日本のゲームを海外でもそのまま売ればいい」という傾向にありました。でも、徐々に日本のゲームが衰退していく中で、アメリカのマーケットにフィットしなきゃいけないので、今は現地の意見も取り入れていこうという考え方が出てきています。
GungHoの戦略
パズドラは今、アメリカでは1400万ダウンロードくらい。ほかの日本のオンラインゲームと比べたら相当ダウンロードされていると思います。ですが、日本での約5000万ダウンロードに比べると、4分の1くらい。人口比率からしたら、本当はもっといって欲しいという気持ちはありますね。
アメリカ製の同様のゲームと比較すると、やはりアメリカ製の方がよっぽど売れています。チーム編成をするなどRPG要素が入ったパズドラに比べて、単純にステージクリアをしていくアメリカ製は、やっぱりアメリカの嗜好に合致しているのでしょう。森下は、アメリカを意識してパズドラを作っておけばよかったと言っていたこともありますが、一方で日本に特化して作っていなければ、日本でもこれほど話題になっていなかったのではと思います。
今のGungHoの戦略は、日本ベースで開発されたタイトルにおいても、まずはアメリカから発信して日本に逆流させるというスタイルです。たとえば「Let it die」というFree-to-playのコンソールゲームは、アメリカから発売しました。主戦場のアメリカから発し、日本に持っていくという流れに沿った一つの作品ですね。
また、持論ですが、マーケティング的には100%に近い賛成派を目指すよりも、賛成派と反対派が50%ずついた方が活性化すると思っています。昔はテレビや紙媒体といった一方方向の手法でしたが、今はソーシャルネットが主流です。いっぱいある意見の中で、どれだけみんなが聞きとめて衝突し、騒いでくれるかがポイントだと思います。バズらせるには半々くらいの意見があった方が、マーケティング的には世間に浸透させられるのではないかと。
今後の展望
今、我々がフォーカスしているのは「対戦」(PvP / Player versus Player)ですね。アメリカのゲームの主流は友人対戦です。AIと対戦するのではなくリアルな人たちと対戦するもの。今こちらの開発チームでは、PvPのタイトルのゲーム開発を進めています。日本で開発中のタイトルもそういった要素が入っています。
もう一つ注目しているのは、eスポーツ。ゲーム上での仮想対戦です。仮想といってもリアルな対戦で、賞金をかけて戦うオフ会のようなものがあったりします。日本でも組織化されているし、オリンピックでも種目化の話があります。
今は、ゲームといえばFree-to-playが主流。ですが、ダウンロードしてもらっただけでは私たちに収益性はありません。いかにお金を使ってもらうために、プレイヤーのモチベーションを上げられるかが重要です。そういった意味では、ゲームプレイの目的意識が明確なeスポーツのようなシステムは、今後大きくなっていくと思います。
グループCEOの森下は、常に「今までに見たことのないゲームを」という概念を持っています。それはとても大事なことで、今後はその要素を私たちのゲームにどう追加できるかを考えていますね。「見たことがないゲーム」というのはなかなか難しいですが、二番煎じにならないように「差別化」という部分は注意しています。
GungHo Online Entertainment America, Inc.
■ホームページ:http://www.gunghoonline.com
■住所:2121 Rosecrans Ave., Suite 3390, El Segundo, CA 90245
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします