短期集中連載
第2回 続・ポジティブ皮膚科学のススメ
食べ物と皮膚

私はこれまで、アメリカ東海岸と西海岸、そしてイギリスで、専門分野の国際経験を積んできました。その3カ所で経験を積んできている日本人皮膚科医は極めて少ないと思われますので、今回はその視点で「食べ物と皮膚」についてお話ししたいと思います。

皮膚や美肌については、体の外側から考える視点と、体の内側から考える視点を同時に持つことをおすすめします。皮膚に対する外側からのケアはもちろん大切なのですが、同時に、内側から健康的な皮膚の保持に気を配る視点も大切であるといえます。後者は「内面美容」といわれる考え方で、皮膚への栄養としての食べ物がポイントとなります。

美しい皮膚を保つためには、タンパク質、炭水化物、脂質という三大栄養素を年齢と生活スタイルに合わせて摂取することに加え、皮膚に必要なビタミンやミネラルを考慮する必要があります。偏食は望ましくなく、皮膚に良いとされる野菜や果物だけを食べるのも良くありません。栄養バランスの良い食事を3食きちんととるのがベストです。ビタミンA、C、Eは、皮膚の老化を防ぐ抗酸化ビタミンと呼ばれています。また皮膚にとっては、糖分の多い食事は避けたほうが望ましいともいわれています。これは、皮膚の抵抗力が弱くなってくるためです。

たとえば、お酒について考えてみましょう。カリフォルニアはワインの産地としても有名です。赤ワインにはポリフェノールという成分が含まれています。これはもともとブドウの皮に含まれているものですが、このポリフェノールは抗酸化作用があって、活性酸素を取り除いてくれるのです。活性酸素は、肌の老化の原因となります。また赤ワインには、ビタミンとミネラルもたくさん含まれています。その一方で、白ワインには腸内環境を整える作用がありますので、こちらも美肌に良いものといえます。

では、ウイスキーはどうでしょう。イギリスのスコットランドは、ウイスキーの産地としても有名です。いわゆるスコッチウイスキーは、かつて朝ドラでも有名になりました。ウイスキーはカロリーが低く、糖分もほとんど含まれていません。そのため、太りにくいことが特徴のひとつです。またウイスキーには、メラニン内のシミの原因物質を抑制する働きもあることが分かっています。さらにはオーク樽で熟成させることによって、オークに含まれるポリフェノールがウイスキーの成分ともなるのです。

お酒全体にいえることですが、飲酒量が過度になりますと、話は変わってきます。お酒にはエタノールが含まれていて、このエタノールが分解されると、アセトアルデヒドというものが出てきて、肌のDNAを傷つけます。飲酒は適量がベストです。

イギリスといえば、アフタヌーンティーなどで紅茶をイメージされる方も多いのではないでしょうか。紅茶にはアンチエイジングに良いとされるポリフェノールに加え、美白成分であるハイドロキノンも含まれています。一方、アメリカはコーヒー文化です。コーヒーには、赤ワインと同じくらいポリフェノールが含まれているといいます。また、コーヒーをよく飲む人には、シミが少ないともいわれています。ただし、飲み過ぎると胃が荒れることもあるので、注意が必要です。

ここアメリカでは、東海岸でも西海岸でも、アーモンドなどのナッツ類がとても親しまれています。アーモンドはビタミンEを豊富に含んでいて、皮膚の血流を良くします。よって、皮膚のシワの改善などにも効果が期待でき、肌のアンチエイジングに良い食べ物といえます。ただし、カロリーが高いので、取り過ぎには注意が必要です。

それと、アメリカ西海岸で有名なのがアメリカンチェリーです。このアメリカンチェリーにもポリフェノールが含まれており、アンチエイジングに良いといわれます。ヒスタミンを抑える作用もあることから、アレルギー症状の緩和にもつながり、アトピー性皮膚炎などの改善にもつながるといわれます。

2019年3月1日に、小川徹さんの著書『ハーバード現役研究員の皮膚科医が書いた 見た目が10歳若くなる本』(東洋経済新報社)が発売されました。中国語版も出版予定です。
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小川徹
皮膚科専門医。アメリカ皮膚科学会会員。ハーバード大学マサチューセッツ総合病院客員研究員。元ロンドン大学セントトーマス病院客員研究員。早稲田大学招聘研究員。元慶應義塾大学研究員。医学博士、MBA、公共政策の修士号を持つ。

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