Vol.11 アメリカ合衆国誕生の地
独立記念館
− ペンシルベニア州 −
文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo
- 2019年6月6日
- 2019年6月号掲載, ペンシルバニア州
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2018年7月現在、167カ国で1092件(文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件)が登録されている。
ペンシルベニア州フィラデルフィア市。宗教の自由が許される前の17世紀にイギリスを逃れた移民たちを受け入れたこの地は、独立革命の拠点となった。1776年7月4日、ここに植民地下の13州の代表者が集い、のちに第3代アメリカ合衆国大統領となるトマス・ジェファソンをはじめとする数名が起草した、イギリスに対する独立宣言書に署名をした。独立宣言が行われたペンシルベニア議事堂は、以来、独立記念館と呼ばれるようになった。1787年には、この同じ場所でアメリカ合衆国憲法が成立。1790年から10年間はフィラデルフィアが新生国家の首都の役割を果たし、アメリカ合衆国議会議事堂が置かれた。
トマス・ジェファソンが仕上げた独立宣言の草案は3日間討議され、全会一致で採択されたという。個人の尊厳や人間の平等・自由などを謳った内容は、アメリカはもちろん、人類史上もっとも重要な宣言となった。この歴史的な出来事を今に伝える貴重な資産として、独立記念館の普遍的な価値が評価され、1979年に世界文化遺産に登録された。
自由を手にした建国の聖地
「すべての人間は平等であり、生命、自由および幸福の追求の権利を与えられている」という内容は、のちのフランス人権宣言や日本国憲法13条にも影響を与えている。そういった意味で、ここは私たち日本人にとっても特別な場所といえるだろう。
建国の聖地としてアメリカの歴史を示し続ける独立記念館を中心にして、周辺はインディペンデンス国立歴史公園に指定されている。まずはビジターセンターに行き、独立記念館のチケット(無料)とマップをもらおう。内部では、フィラデルフィアの歴史をまとめたビデオ上映や季節の展示イベントなどが開催されている。すぐそばの独立記念館は、1749年に州の議事堂として造られた。赤レンガ造りの2階建ての建物は、ドーム型の尖塔を中心に左右対称に広がり、18世紀のイギリス建築の典型的な造りとなっている。内部を見学するには、20〜30分ごとに開催されるガイドツアーに参加しよう。独立宣言とアメリカ合衆国憲法が成立した、まさにその部屋の内部に足を踏み入れることができる。
独立記念館のそばにはリバティ・ベル・センターがあり、自由の鐘が保管されている。独立宣言が読み上げられた際、イギリスからの独立を祝って、この鐘が高らかに鳴り響いたのだそうだ。鐘にはこの国の未来を予言するかのように、聖書の一節「地上に住むものすべてに、自由を宣言せよ」が刻まれていた。このほかにも、周辺にはジョージ・ワシントンやジョン・アダムスが大統領時代に暮らしていた邸宅跡や、独立宣言起草者の一人であるベンジャミン・フランクリンの史跡が集まったエリアなどがある。
ニューヨークからもほど近い歴史の地・フィラデルフィア。今年の独立記念日に向けて、アメリカの成り立ちを知る旅に出かけてみてはいかが。
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