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老親の資産を守る~日本の成年後見制度~〈後編〉
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2019年7月18日
前回から2回に分けて日本の成年後見制度を紹介しています。前回は制度の概要や後見人が行う仕事内容について紹介しました。今回は手続き、費用、後見制度を利用するケースを紹介します。
3.後見制度を利用する場合の費用
成年後見制度を利用する場合、後見人に費用を支払う必要があります。費用は法律で定められており、定期的(本人との面談、生活費や医療費の支給、財産管理など日常生活に関わる作業)な金額として毎月2万円がかかります。弁護士、司法書士など専門職の人が後見人を行う場合はそれ以上かかる場合もあります。また、この金額のほかに、不動産の処分、年金の申請や変更届けなど、臨時の作業を行う場合は別途料金が発生します。
支払いは後見人の管理で本人の預金口座から引き出します。親族が費用を捻出するわけではありません(本人の財産がない場合を除く)。
4.後見制度を利用する場合の手続き
1)法定後見
手続きですが、家庭裁判所への申立手続きからスタートします。申し立てできるのは親族(4親等以内)や市町村(市区町村長)等になります。申し立ての際に後見人の候補者も申請し、その後、家庭裁判所で本人の健康状態や後見人候補者の審判を行います。その際、申し立て人を含め面接もあるため、海外在住者が申立人となるのは難しいかもしれません(日本に滞在している必要があります)。
結果が分かるまで2~3カ月程度かかります。なお、身寄りのない(親族がいない、いても関わりがない)人の場合は親族による申立手続きができないので、社会福祉士や介護業者などが市区町村に相談して申立手続きを行います。
2)任意後見
任意後見においては、まだ本人の判断能力は低下していないので、法定後見のような家庭裁判所への申立手続きはありません。当事者間(本人と後見人)で任意後見契約を締結します。この契約は公正証書である必要があるため、契約書を作成した後、公証役場で公証人と面談をしながら契約内容についてチェックを受けます。したがって、適当に作成すればよいというものではありません。この契約書の作成については弁護士、司法書士などの専門業者に依頼することもできますし、直接公証役場へ出向けば(要予約)、当事者間の合意事項をヒアリングしながら公証人が契約書を作成してくれます。
手続きについて、詳しくは下記家庭裁判所のウェブサイトをご参照ください。
<家庭裁判所:後見サイト>
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/kokensite/index.html
5.後見制度を利用するケース
では、どういう場合に利用するか、いくつかのケースを取り上げて紹介します。
1)自分の親が認知症になってしまったケース
すでに父(母)が認知症になってしまった場合は、母(父)または子(自分または兄弟)が裁判所へ法定成年後見の申し立てを行います。申立人と後見人候補者は同一人でも別人でも構いません。
専門家でない親族が後見人に選任される場合は、後見監督人(後見人を監督する人)が併せて選任されます。親族が後見人になるつもりがなく、また後見人として依頼したい専門家がいなければ、市区町村役場(各地域の社会福祉協議会)へ相談すると代わりに手続きしてくれます(これを「市区町村長の申し立て」といいます)。
2)親以外の親族(叔父、叔母など)が認知症になってしまったケース
その親族に配偶者、子がいれば後見制度を説明して手続きを進めてもらえば良いですが、いなければほかの親族が裁判所へ申し立てを行うのがよいでしょう(その場合、推定相続人となるほかの親族の同意が必要です)。そうした親族もいなければ、市町村役場(社会福祉協会など)へ相談して市区町村長等の申立手続きをしてもらう方法もあります。
3)親が将来認知症になるかもしれないケース
まだ認知症になっていないのであれば、任意後見契約(任意後見制度)が有効です。これは、いつ認知症が発症してもスムーズに後見活動に移行できるよう、あらかじめ取り決めを行うものです。契約当事者は親(本人)と子(自分)でも良いし、または子ではなく専門家に依頼することもできます。任意後見契約ではまだ判断能力は低下していませんから、最初のうちは見守り契約といって定期的(月に1回程度)に本人の様子をうかがいます。
4)(自覚症状などがあって)自分が認知症になるかもしれないケース
上記の3)のケースとまったく同じです。自分がもし認知症になった時に備え、今のうちに誰か(親族、知人、専門家など)と任意後見契約を締結しておくことは有効です。
いかがでしょうか? 平均寿命が高く高齢者の預貯金の比率が高い日本では、近い将来必要になると考えられます。お金に関するトラブルを防ぐための手段として知っておくとよいでしょう。
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