Vol.12 氷河が作り出した美しい世界
ヨセミテ国立公園
− カリフォルニア州 −
写真・文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito)
- 2019年8月6日
- 2019年8月号掲載, カリフォルニア州
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2019年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。
カリフォルニア州の中ほどに位置するヨセミテ国立公園は、年間約400万人も訪れる人気の観光地。人々を魅了するのは、ダイナミックな岩壁や大小いくつもの滝と湖、緑溢れる広大な森、そしてそこに生きる動植物たち。
この美しい景観は、氷河時代から何十万年もの歳月をかけて、この地を覆う花崗岩が氷河によって削られてできたもの。硬く風化しにくい性質の花崗岩は、かつての風景を変わらず今に伝えてくれている。氷河が磨き上げたドーム状の岩山やそびえ立つ絶壁といった類稀な自然美が、地球生成の歴史を示す顕著な見本として評価され、1984年に世界自然遺産に登録された。
約75万エーカーという広大な敷地の95%は、手つかずの自然が保存されている。ここにはブラックベアや、一時は姿を消したビッグホーンシープをはじめ、約90種類の哺乳類、150種類以上の鳥類などが生息している。また、北米西海岸の一部の地域にしか生息しない、世界最大の樹木ジャイアントセコイアの森があるのも特徴の一つ。園内の標高は2200〜1万3100フィートに及び、多種多様な生態系が維持されている生命の楽園なのだ。
U字の渓谷に広がる絶景
見どころが集中しているのは、ヨセミテバレーと呼ばれるエリア。西側のエントランスを入ってすぐに見えてくるのは、エル・キャピタンと呼ばれる巨大な花崗岩の一枚岩だ。氷河によって垂直に削られた壁の高さは3593フィート。目を凝らせば、この世界最大の岩に挑むロッククライマーが米粒サイズで見えるかもしれない。公園の奥へ進むと、ドーム状の岩を真っ二つに裂いたような形のハーフ・ドームと呼ばれる岩山も見えてくる。
春から初夏の雪解けの季節に訪れるなら、園内に点在する滝は必見だ。3段階の滝から成るヨセミテ滝は、その落差が2425フィートと北米最大。トレイルを歩いて滝の真下まで行けば、雨のようにしぶきが降り注ぎ、ゴウゴウと勢いよく流れ落ちる大迫力を楽しめる。このほか、ブライダルヴェール滝やヴァーナル滝、ネバダ滝など、トレイルでめぐれる滝が多くある。これらの滝は夏には水量が落ち、秋には枯れてしまうので、見たいならタイミングが大事。
トンネル・ビューやグレイシャー・ポイントに行けば、ヨセミテバレーに広がるユニークな岩山や滝などが一望できる。ハーフ・ドームがピンクに染まる、サンセットの時間帯は人気だ。
もっと静かに園内を楽しみたいならヨセミテバレーを離れ、夏の間しかオープンしていないトゥオルミ・ミドウやジャイアントセコイアが見られるマリポサ・グローブに行ってみるのもいいだろう。園内には多くのハイキングトレイルがあるので、せっかく訪れたのなら大自然の中を歩くのがおすすめ。
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