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日本の遺族年金~将来の請求手続きのために準備しておくこと〜
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2019年8月16日
米国居住者が以前、日本の公的年金(厚生年金、国民年金、共済年金など)に加入していたことがあれば、たとえ短期間の加入であっても老齢年金を受給でき、同様に遺族年金も受給することができます。ただし、遺族年金の請求の場合は老齢年金の請求に比べると提出書類がやや複雑で、受給権があったとしても書類が揃わずに受給できなかったというケースがあります。そこで今回は遺族年金請求のため、今のうちからできることを紹介します。
遺族年金については、2016年12月28日の当コラムでも概要を紹介しているので、併せて参考にしてください。
1.遺族年金の概要
遺族年金は被保険者(働いて保険料を支払い、まだ年金を受給していない人)、または年金受給者が死亡した場合、その者に生計を維持されていた遺族に支給されます。遺族基礎年金と遺族厚生年金(遺族共済年金)の2種類があります。
遺族基礎年金は18歳未満の子がいる場合にのみ支給され、遺族厚生年金は配偶者または18歳未満の子がいる場合に支給されます(配偶者、子がいなければ父母、孫、祖父母も遺族になる場合あり。ただし妻、子以外は55歳以上に限る)。
年金額ですが、遺族基礎年金が年間約78万円、遺族厚生年金は死亡者が受給していた(受給する予定だった)老齢厚生年金の4分の3に相当する金額となります(一部加算額あり)。
2.請求手続き
請求手続きは、被保険者(年金加入者本人)または年金受給者が死亡した後に行います。手続きは日米社会保障協定により米国の年金事務所の窓口でもできますが、担当者が日本の年金についての知識がなくスムーズに進まないかもしれません。できれば来日の機会があれば、その際に最寄りの年金事務所で行うか、日本に住む親族または代理人にお願いすることをおすすめします。
3.提出書類と注意点
以下は最低限必要な提出書類になります。このほかにも死亡者、請求者(遺族)の状況によって追加で必要となる書類もあります。
②請求者の在留証明書(外国籍の場合はNotary発行のものでも可)
③配偶者、子であったことの証明書(日本国籍なら戸籍謄本、外国籍なら結婚証明書など)
④死亡者と請求者が生計同一(同居)であったことが確認できる書類
⑤請求者(遺族)の収入が確認できる書類のコピー
(確定申告書Form1040など。子が高校生以下の場合は不要だが学生証のコピーが必要)
⑥死亡診断書コピー
⑦年金振込先金融機関の通帳コピー(小切手、銀行のステートメントのコピーも可)
(日本以外の)海外在住者の場合、上記書類の中でも④について苦労されているようです。日本在住者の場合は住民票を提出することで生計同一とみなされるのですが、海外在住者の場合は住民票の代わりに提出する③在留証明書だけでは不十分なためです。具体的にどういった書類でよいのか、直接年金事務所へ確認するのがおすすめです。
また老齢年金の受給資格要件はもともと年金加入期間25年でしたが、2017年8月に10年に短縮されました。しかし、遺族年金については従来通り25年のままですのでご注意ください(米国在住者は日米年金通算が25年でも可)。
4.今のうちから準備しておくこと
たとえば重い病気で医師から余命宣告を受けているような場合であれば、残された遺族に財産を含め年金の情報も事前に伝えておくことができますが、そうでない場合、不慮の事故による死亡というケースも想定されます。したがって早い時期に家族に次のことを伝えておきましょう。
・自分が年金の被保険者または年金の受給者であること。また自分が死亡した場合は、残された家族が遺族年金を受給できるということ(事前に確認する必要あり)
・遺族年金の請求時の連絡先(日本年金機構、共済組合など)
・手続き時に必要となる書類についての入手方法など。たとえば戸籍謄本であれば、本籍地のある日本の市町村役場への請求方法。また年金に関する書類や毎年の確定申告書であれば過去の分も廃棄せずにまとめて所定の場所へ保管しておきます
5.遺族となる配偶者が外国籍で日本語を話さない場合
請求手続きの際はまず保険者(日本年金機構または共済組合)に国際電話をかけ、英語で話せるかどうか確認するようにしてみてください。現在電話における翻訳サービスは提供されていませんが、運良く英語を話せるオペレータが出た場合に対応できる可能性があります(可能性は低いですが)。または米国Social Security Officeに電話するか、最寄り事務所へ出向いて日本の遺族年金について確認するようにしてみてください。対応してくれるかもしれません。
上記いずれの方法でも請求手続きを行うことができない場合は、専門業者(日本の社会保険労務士)を探して代行請求手続きを依頼してみてください。なお、弊社でも英語での対応は可能です。
・日本年金機構(厚生年金、国民年金):81-3-6700-1165(81は日本国番号)
・共済組合(共済年金):公務員、学校関係者の所属機関ごとに異なります。個別にご確認ください。
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