Vol.14 霧立ち込める原生林
グレート・スモーキー山脈国立公園
− ノースカロライナ・テネシー州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2019年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。

グレート・スモーキーは、北米大陸でもっとも大きな原生林を有する森のひとつ

アメリカの東部、ノースカロライナ州とテネシー州にまたがるグレート・スモーキー山脈国立公園は、手つかずの原生林が今なお残る広大な森林地帯。木々から発せられる蒸気によってしばしば森が霧で覆われることから、この名称がついたのだそうだ。太古から形成されてきた神秘的な光景は格別で、アメリカの国立公園で年間最大の来訪者数を誇る。

園内には、標高6000フィートを超す山が16峰もある。高低差875〜6643フィートという変化に富んだ地形が、世界的に見ても非常に稀な生物の多様性を生み出した。約52万エーカーという東京都とほぼ同じ広大な敷地の95パーセントは、手つかずの自然が保持されている。

1983年、世界自然遺産に登録された際にもっとも評価を受けたのは、生物学的な価値。ここには約6000万年前の植物群が今も自生しており、現在に至るまでの植物の進化の過程を知るうえで重要な見本とされている。また、高低差による多様な温度帯は固有種を含む3500種以上の植物を育み、その数はヨーロッパに生息する木々の数に匹敵するほど。絶滅危惧種に指定された生物も敷地内で多く確認されており、サンショウウオもその一種だ。ここでは世界でもっとも多い30種のサンショウウオが見られ、「サンショウウオの首都」ともいわれている。

さまざまな表情を見せる大自然

園内には清らかな川や滝が点在

公園には、テネシー州のガトリンバーグとタウンセンド、ノースカロライナ州のチェロキーから入ることができる。タウンセンドの入口付近、公園の西側にあるケイズコーブという谷は、野生動物を観察できるスポット。エルクやブラックベア、コヨーテなど、さまざまな動物にめぐり会えるチャンスだ。

谷をくねくねと横切る11マイルのループロードでは、美しい山脈を眺めながらドライブも楽しめる。ガトリンバーグから入ると、周辺には滝が多く点在している。約80フィートの高さから流れるローレル滝や、晴れた午後には滝のミストが作り出す虹が見られるレインボー滝などがあり、ハイキングしながらの散策がおすすめ。

公園の中央を縦断し、ガトリンバーグとチェロキーを結ぶニューファウンド・ギャップロードはドライブに最適だ。途中、標高約5000フィートの高さから谷を一望できるビューポイント、ニューファウンド・ギャップもお見逃しなく。そこから南西へと続く道の先には、園内最高峰のクリングマンズ・ドームがある。時間に余裕があれば、公園の東側、カタルーチー・バレーにも足を伸ばそう。この辺りにはかつて生活を営んでいた人々の文化遺産が残っているほか、野生動物の遭遇率も高いといわれている。

5月末〜6月末には幾重にも折り重なるホタルの光を、秋には赤や黄、ゴールドに染まる紅葉を見られるグレート・スモーキー山脈国立公園。どの季節に訪れても、変化に富んだ表情を見せてくれるだろう。

ブラックベアの生息密度が高いことでも知られる©︎Gary Carter

遺産プロフィール
グレート・スモーキー山脈国立公園
Great Smoky Mountains National Park

登録年 1983年
遺産種別 世界自然遺産
https://www.nps.gov/grsm/index.htm

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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