短期集中連載
最終回 ポジティブ皮膚科学・応用編
パワーエリートをつくるための「皮膚科学×スポーツ科学」

私の第一の専門は皮膚科学で、第二の専門はスポーツ科学です。「皮膚科学×スポーツ科学」という新たなコンセプトが、ビジネスパーソンを含むパワーエリートをつくることにどのように貢献できるかということについて、今大きな関心を持っています。パワーエリートにとって、体を鍛えることと見た目(皮膚)を磨くことは、人生の成功を引き寄せていくうえで、私には車の両輪のように思え、そのどちらもが大きな武器になるであろうと考えています。皮膚科学とスポーツ科学によるこの二面作戦は、私が考えた人生戦略の独自の視点です。

アメリカでは、多くの人たちがジョギングをしている姿を日常生活の中で本当によく見かけます。私は今回読者の皆様に、そのジョギングをおすすめしたいと思っています。1回30分くらい、毎日ではなく週に数回のジョギングを実践するというところがポイントです。走り過ぎることは、効果を下げてしまいます。基本的にスポーツをすることで体が鍛えられるというのはもちろんのこと、皮膚の大敵であるストレス解消にもつながります。皮膚とスポーツの接点は、ストレス解消という意味でも大いに関係しているのです。ストレス解消にはある程度の有酸素運動が有効で、ジョギングはその代表といえます。脳内を活性化させるセロトニンという物質が分泌されますので、走る時間帯は朝か、良質な睡眠の導入という意味で早めの夜がいいでしょう。

また、睡眠は皮膚の再生に重要です。寝ている間には成長ホルモンが分泌されるため、肌荒れなど皮膚の修復が行われています。私が手がけた著書の中でも指摘していますが、人間関係において第一印象はとても大切です。忙しい現代社会において、質の高い睡眠時間の確保は大変でしょう。しかし、ビジネスパーソンを含むパワーエリートにとって、第一印象という意味においても、肌という身だしなみはとても重要な視点と考えます。

またスポーツは、関係の深い運動野や小脳をはじめとして、脳全体の神経活動を活発にします。特記すべきことに、ジョギングは記憶力を高めるためにも良いのです。脳の記憶に関係している海馬での神経再生に効果があるからです。さらに、スポーツのパフォーマンスを高めるためには、睡眠による体で覚えたパフォーマンスの記憶の固定が重要といわれます。

次に皮膚とスポーツの接点として、「発汗」という現象に注目しながら体のメカニズムについて説明したいと思います。皮膚という切り口からスポーツを考えるうえで、知識として重要と思うからです。通常体温は、熱の産生量と放散量によって決まります。スポーツをすると、体内でつくられた熱を放散するために皮膚血流を増加させ、発汗を促進させます。一般的に女性よりも男性の方が発汗機能が高いです。気温の高い状況下でスポーツを継続するには、体外へ熱を放散すること、脱水を防ぐことなどが重要です。

そして持久性の高いスポーツを継続して行うことにより、発汗などの熱の放散機能が高まると同時に発汗にともなう塩分濃度が減って、体液の状況も良くなります。通常は開始してから数日して、体温の上昇度の低下が認められるようになってきます。ちなみに冬のスポーツなど、逆に気温の低い状況では、われわれは体内で熱産生を増やし、皮膚の中の血管を収縮させることによって熱の損失を抑えているのです。

最後になりますが、ビジネスパーソンを含むパワーエリートをつくるための方法として、私は皮膚科学もスポーツ科学も大きく貢献できると考えています。2019年は日本でラグビーのワールドカップがアジアで初めての開催となり、2020年にはいよいよ東京オリンピックイヤーを迎えますので、さらなるスポーツ熱の高まりに期待が膨らみます。今後私は、これまで提唱してきたポジティブ皮膚科学という概念の具現化として、またパワーエリートをつくるための新たな発想として、「皮膚科学×スポーツ科学」というコンセプトの可能性を考えていきたいと思っています。

小川徹
早稲田大学スポーツ科学卒業、横浜市立大学大学院皮膚科学修了。米国皮膚科学会、米国スポーツ医学会会員。早稲田大学総合研究機構招聘研究員。米マサチューセッツ総合病院、UCLA、英セントトーマス病院などで国際経験豊富。医学博士、MBA、公共政策の修士号を持つ。著書『ハーバード現役研究員の皮膚科医が書いた見た目が10 歳若くなる本』(東洋経済新報社)を好評発売中。

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