【ニューヨーク不動産最前線】
COVID-19におけるテナントの救済措置

ニューヨーク市が全米最大(世界最大)のコロナ罹患者数の町となってしまいました。人口密度から考えると当然のことなのですが、1カ月ちょっと前のニューヨークにはまだそこまでの切羽詰まった雰囲気はありませんでした。緊急事態宣言が出て自宅待機要請が出てから一気に町の様子は一変しました。町の活動が一斉停止しています。

当然、私たちの業界も例外ではなく、まず多くの商業ビルで物件のショーイング(内見・案内)は禁止となり、次いで住宅ビルでもショーイングや引越し荷物の搬入が禁止となりました。ついには、住宅ビルでは住人以外の人の入館が禁止となり、友人や家族でさえも部屋に入ることはできなくなりました。物理的にマーケットは完全に止まってしまいました。

ニューヨーク市では3月13日に市長が、経済的・健康上の理由で家賃が払えなくなったテナントに対する救済措置として、Moratorium on Evictions(立ち退き猶予)を発表しました。これはたったの1週間だったのですが、時を同じくしてREBNY(ニューヨーク市不動産協会)は3カ月間の立ち退き猶予期間を提案し、賛同するオーナーが出てきました。レントを滞納しても3カ月間は部屋を追い出されないことに加え、延滞料も免除です。敷金をレントに当てたり、クレジットカードで支払う場合はカード使用料を免除したりとテナントを補助する方針をいろいろと実施しているオーナーもいます。もちろん、賛同して実施しているのは体力のある大手企業オーナーですが、これによって助かっているテナントは多数いるはずです。

個人オーナーは残念ながらこういうわけにはいきません。固定資産税やビルの管理費の支払いは待ってくれないので、テナントからの家賃収入がなくなるとアパートが維持できなくなるオーナーもいます。テナントも困りますがオーナーも困るのです。マーケットが止まっているので当然ブローカーも失業状態です。

どうやってオーナーもテナントも、そしてブローカーも、全員が共存していくか、どうやってこの苦境を乗り越えるのか、まだまだ課題だらけですが、これを機会にニューヨークの不動産マーケットと不動産業界が大きく変わるのは間違い無いでしょう。

ちなみにニューヨーク市の持家比率は33%です(2018年:Home Mortgage Disclosure Act data)。全米平均持家率が64%なので、圧倒的にニューヨーク市では部屋を所有するより借りている人が多いのです。このことはニューヨーク市がオーナーよりもテナント寄りの政策を優先している理由になっているかもしれません。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2001年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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