第86回 オンライン授業、低学年の場合

この原稿を書いている2020年12月中旬現在、カリフォルニアの多くの学校の授業は、100%オンライン、または定員数を大幅に絞ったシフト制の対面式のいずれかとなっている。最近、私は主に小学校低学年の子どもを持つ日本人の保護者向けのオンライン授業をテーマにしたセミナーを取材する機会に恵まれた。講師はロサンゼルス近郊の学区の現地校で教える日本人教師。その先生の話から、いかに低学年の子どもにオンライン授業を受けさせることが難しいかが伝わってきた。

100%オンラインで大学の授業を受けているニナは、当然ながら自分で授業の準備をして画面の前に座り、宿題を提出できる。しかし、低学年の児童は「画面の前にじっと座っている」こと自体が難しい子どももいると、その先生は言った。さらに、授業中、親が横にいて手伝いをすることが求められる。親の負担がどれほどのものか、私は思わずはるか遠くを見つめてしまった。長男のノアが土曜の日本語補習校に通っていた小学校1年と2年の頃、金曜の夜になると、気乗りしないノアを叱咤激励しながら、私は勉強机で全教科の宿題の指導をしたものだ。しかし、現在、オンライン授業を受けている子どもたちと親にとっては、それが毎日のことであり、しかも教師は英語で話しかけてくる。アメリカ生活が長い親ならいざ知らず、日本から数年前に赴任して来たばかりの駐在員家庭の場合、英語のハードルは高い可能性もある。自分がもしもその立場だったら、オンライン授業を受けている子どもより先に、自分が鬱になってしまうかもとさえ思える深刻な事態だ。

迷わず助けを求めてほしい

先のセミナーの講師は「自分ですべてを解決しようとしないで、周囲に助けを求めてください」とアドバイスした。また、「教育は、子ども、教師、保護者の3者の協力によって成り立ちます」とも話していた。教師に助けを求めるのが最善策だろうが、英語のハードルがある場合はどうしたらいいのだろう。

私は1年前にボランティア活動を通して知り合ったY子さんのことを思い出した。日本人が多く暮らすサウスベイにある塾で働いている彼女なら、おそらく小学校低学年の子どもを持つ日本人の家庭の状況について知っているに違いないと思ったのだ。

Y子さんが勤務する塾は、家庭と教師の橋渡しをしてくれるだけでなく、子どもが塾のパソコンから塾の講師のサポート付きで現地校のオンライン授業を受けることもできるそうだ。しかし、問題なのはコロナ禍の今、ソーシャルディスタンスを保つ必要から、需要が多いにもかかわらず子どもの受け入れ枠が非常に制限されている点。「コロナの前はアフタースクールの塾として、教室には大勢の子どもたちがいましたが、今は午前と午後にシフトを分け、ディスタンスを取って子どもがパソコンの画面越しに学んでいます」とY子さん。

また、Y子さんによると学区によっては、教師とのやりとりに日本語の通訳サービスを提供してくれるところもあるようだ。「トーランスでは教師とのコンファレンスの際などに、通訳が必要かどうかを聞かれます。日本語と記入すれば手配してくれます」とのこと。私の子どもたちが通った学区にはそのようなサービスがなかったので、それもまた目から鱗だった。

子どものオンライン授業が負担だったら(負担に違いないが)、友人、通訳、塾のいずれであっても、助けてくれる人には迷わず助けを求めたほうがいい。コロナ・パンデミックの今、「自分たちだけでは決して生きていけない」ということを再確認している人は多いはずだ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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