Vol.19 世界最長の鍾乳洞
マンモス・ケーブ国立公園
− ケンタッキー州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2020年7月現在、167カ国で1121件(文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件)が登録されている。

洞窟内では、床面から上へと成長していく石筍と天井から垂れ下がった鍾乳石が見られる

ケンタッキー州の西部に位置するマンモス・ケーブ国立公園は、複雑に絡み合った小道と大小さまざまな部屋のような空間が張りめぐらされた鍾乳洞。地下200〜300フィートの深さでツタのように広がるこの空間は、現在調査で分かっているだけで412マイル以上にも及び、世界最長の洞窟といわれている。今もなお続く調査では新しい小道が次々と見つかっており、その全体の大きさは未知数だ。

もともとこの地一帯は、水に溶けやすい石灰質の地層で構成されていた。何百万年もの歳月をかけて雨水や地下水に浸食され、現在のようなカルスト台地が形成されたのだという。地下空間には、地球の誕生からこれまで経てきたいくつもの進化の段階を示す貴重な証拠が残っており、また、今も変化を遂げ続ける地質過程を見ることもできる。気温は年間を通して常に54℉前後。閉塞的なこの空間では、独自の生態系が築かれてきた。現在、固有種を含む130種以上の生物が生息しており、そのうち70種ほどが絶滅危惧種に指定されている。地球形成の歴史を解き明かす重要な資料として、1981年に世界自然遺産に登録された。

地球の神秘がここに

グリーン川でカヤッキング ©︎Liam Seymour

マンモス・ケーブ国立公園の広さは約5万3000エーカー。地底に潜む巨大な鍾乳洞だけでなく、地上には敷地内を縦横に流れるグリーン川とノーリン川、森林地帯、教会や墓地といった史跡など、見どころは多数ある。

まずはマンモス・ケーブのハイライト、洞窟探検へ。自分のペースでめぐることも可能だが、ガイド付きツアーに参加すれば成り立ちからしっかり学んで楽しめる。所要時間や難易度、まわるポイントが異なる10以上のツアーが用意されているので、好みに合わせてツアーを選んで参加しよう。「Frozen Niagara」と呼ばれる氷柱のように垂れ下がった鍾乳石や、洞窟内部でもっとも広い空間である「Rotunda」、ドーム状にぽっかりと空いた空間「Mammoth Dome」など、自然が造り出したユニークな岩の彫刻には目を見張ってしまう。足腰に自信があり、洞窟内を満遍なく見たい人には、2時間コースのヒストリック・ツアーがおすすめ。

洞窟探検が終わったら、地上の美しい大自然を満喫しよう。ビジター・センター周辺や川沿い、バックカントリーなど、公園内には短距離から長距離までさまざまなハイキング・トレイルがある。トレイルには所どころに「Beneath Your Feet」と書かれた看板があり、自分が今立っている場所の真下が洞窟のどの部分に当たるかを確認できるようなおもしろい仕組みも。看板にあるQRコードをスマートフォンで読み込めば、地下の様子を動画で見ることもできるので試してみて。公園内を約26マイルにわたって流れるグリーン川も人気のスポット。川遊びや釣りのほか、カヌーやカヤックに乗って水上アクティビティを体験するのもおすすめだ。

地下空間では地球の神秘を、地上では緑豊かな景観を楽しめるマンモス・ケーブ国立公園。ここに来れば、母なる大地の偉大なパワーを体の芯から感じられるはず。

秋には赤く染まる木々

遺産プロフィール
マンモス・ケーブ国立公園
Mammoth Cave National Park

登録年 1981年
遺産種別 世界自然遺産
www.nps.gov/maca/index.htm

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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