代替肉で地球を救え!
NEXT MEATSのあくなき挑戦

New Business Close Up
アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。

今、日本で話題の焼肉用代替肉「ネクスト焼肉」カルビ

今、「代替食品」への関心が世界中で急速に高まっている。今回、一個人の探究心から始まり、斬新な取り組みで注目を集めている代替肉開発ベンチャー企業に注目した。2020年7月、プラントベースのハンバーガー発売を皮切りに、世界初の焼肉用フェイクミート「ネクスト焼肉」や代替肉の牛丼と、続々と商品を発売する「ネクストミーツ(NEXT MEATS)」だ。焼肉チェーン店とのコラボによりネクスト焼肉の取り扱いを開始するなど、前代未聞な取り組みは多数のメディアで取り上げられて話題となり、ファンが急増中だという。

2021年1月にはNEXT MEATS HOLDINGSとしてアメリカの証券市場にも参入。日本を代表する代替肉ブランドとして期待が高まる同社のCEO、白井良さんに話を聞いた。

地球の未来のために起業

NEXT MEATS HOLDINGSのCEO、白井良さん

地球上で危惧されている温暖化問題。その原因の一つとなっているのが、過剰な工場型の畜産です。たとえばハンバーガーのパテを1個作るために、ガソリン車が約18キロ走るのに匹敵する温室効果ガスが排出され、2500リットルの水が必要というデータがあります。代替肉とは、植物性の原料などを使って肉の味や食感を再現して作られた、食肉の代わりとなる肉のこと。食肉を代替肉に置き換えることで、約90%もの温室効果ガスを削減できるといわれています。また、世界ではフードロスの問題も深刻化していますよね。これらの危機を乗り切るため、畜産の肉を代替していくことは急務です。未来に向かう次世代の笑顔を絶やさないようにしたい、そんな想いから、私たちは代替肉の開発をスタートしました。2017年から3年半かけて、大学や食品工場などとコミュニティを作りながら研究・実験を重ねました。2020年に商品化の目処が立ち、フードテック「NEXT MEATS」として株式会社化。 “地球を終わらせない” を企業理念とし、サステナビリティ(持続可能性)を掲げて代替肉を製造しています。

現在商品化しているのは、ハンバーガー、「ネクスト焼肉」という名のカルビ・ハラミ、牛丼など。ネクスト焼肉は焼肉チェーン店「焼肉ライク」での商品導入で全国展開を実現し、メディアやSNSを通して広く認知されるようになりました。焼肉店で代替肉を取り扱うことで、ヴィーガンとそうでない家族が一緒にレストランで焼肉を楽しめるようになり感激したという評価もいただいています。牛丼チェーン店との話も進めており、最近では同じくサステナビリティの取り組みを行うユーグレナ社と共同開発した代替肉も発売開始しました。また、2020年の暮れには豊田通商とパートナーシップを結び、今後は海外での流通も強化していきます。

代替肉は健康にも良い

まだあまり認知されていませんが、実は赤身の肉には発ガン性のリスクがあるといわれており、食べ続けると腸内フローラが変化していくという研究結果が出ています。食肉から代替肉に切り替えることで環境への負荷はもちろん、体への負担も減らすことができるんです。

ちなみに弊社のネクスト焼肉は、100g中に含まれるタンパク質の量が食肉の約2倍。脂質は半分以下に抑えられています。動物性の食肉に含まれているコレステロールは植物性の代替肉には含まれておらず、トランス脂肪酸などもありません。ヴィーガンはもちろん、健康に気を遣っている人やアスリートにも受け入れてもらえる商品なんです。

NEXT MEATSはここが違う!

「ネクスト焼肉」ハラミ。食感も味も、本物の肉との違いが分からないほどのリアリティ

主原料が植物由来であることはもちろん、卵も乳成分も含まない “100%植物性” にこだわりました。調味料も砂糖は甜菜糖を使用、パームオイルは使わないなど、こどもも安心して食べられるよう添加物を一切使用していません。

本物に近い代替肉を作るうえでとても大切な要素は、見た目、味、匂い、食感の4つ。1番難しいのは食感を出すところですね。弊社ブランドでは、産地の異なる大豆やエンドウ豆、ヒヨコ豆といった豆類の組み合わせ、そして加工の工程で粗削りにしたり粉末にしたりと粗さを変えることで、ハンバーグや焼肉用カルビ・ハラミ、牛丼用肉それぞれの風味やテクスチャーを表現しています。本物らしさを再現するために、原料レベルで相当な手間をかけて研究しました。3年間ほど何度もトライアンドエラーを重ね、心が折れたこともあります。ですが、我々は利益追求を目的としていたわけではなく、 “地球の持続可能性” をミッションとして将来的に役に立ちたいという想いで取り組んできました。そうしてやっと納得のいく良いものができ、世に出していこうということになったんです。

実際に食べてもらえば分かりますが、カルビとハラミでも味や食感が全然違うんですよ。牛丼やバーガーにしてもそうですが、味や食感という加工技術では我々独自の価値を出せていると自負しています。また、和テイストの代替肉は日本企業だからこそできるものなので、アメリカのビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズといったブランドとは差別化を図りながら、確実に世界展開していけると信じています。

代替肉市場は今後ますます重要になる

代替肉を使った牛丼

2030年までに代替肉市場は今の8倍になるといわれています。細胞を増やすことで作る培養肉も現在かなり研究開発が進んでおり、2028年頃から一般化されるという話もあります。我々も、培養肉や微細藻類といった分野での研究も進めているんですよ。世界は2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、パラダイムシフトが必要不可欠とされています。

我々としては、2050年にはすべての肉を代替するという目標を掲げています。地球の人口増加によるタンパク質不足に貢献し、CO2も減らしていく狙いです。そこから逆算して、今はまず、市場サイズがもっとも大きく資金調達のしやすいアメリカの証券市場に参入し、最短スピードで生産開発を進めたいと思っています。ただ、日本で認知してもらうことは必須事項であり、ジャパンブランドという認識を定着させたうえでアメリカに展開することが目標です。現在、アメリカで製造拠点を準備しており、今年の5月頃から生産開始を考えています。夏くらいまでには販売に向けて動いていけたら良いと思っています。まずはオンライン販売からですが、レストラン業界や焼肉チェーン店などにも導入してもらい、将来的にはグローサリーストアでビヨンド・ミートの商品にも並ぶようなブランドにしていきたいですね。

世界中に競合はいますが、この分野においては競合という考え方は関係なく、持ちうる技術を掛け合わせてオープンイノベーションをやっていきたいと考えています。利益向上・黒字化はもちろん大事なことですが、本当に優先すべきはサステナビリティに重点をおいて世界が協力して市場を拡大し、来るべくパラダイムシフトに備えるということです。77億人にとって良いことをしていきたいですね。

アメリカに在住の皆さんにはぜひ、「こういう日本のブランドがあるんだ」という話題を周りの方に広めてもらえたら嬉しいです。地球の未来を創るという意味でも大事な一歩につながるので、草の根活動にご協力をお願いします!

NEXT MEATShttps://nextmeats.co.jp/

PROFILE
白井 良
シリアル・アントレプレナー。大和証券で営業・ファイナンシャルアドバイザー、ホワイトホールでコンサルティング・貿易業などを経験。2017年から代替肉の研究を開始し、創業者・出資者として、代表の佐々木英之(日本法人CEO)とともに2020年6月にネクストミーツ株式会社を設立。

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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