Vol.24 神秘的な地下のワンダーランド
カールズバッド洞窟群国立公園
− ニューメキシコ州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito) 写真提供/NPS Photo

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2021年8月現在、167カ国で1154件(文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。

ソーダストローと呼ばれる細く垂れた無数の鍾乳石。ビッグルームにて ©︎Peter Jone

ニューメキシコ州の南東部、テキサス州との境に位置するグアダループ山脈の麓には、地底に広がる鍾乳洞群がある。ここには現在確認されているだけでも80以上の洞窟があり、いまだ未確認の部分も多い。最深部が地下980フィートにも及ぶ洞窟内では多様な鉱石が見つかっているほか、石筍や石柱といった鍾乳石、ユニークで神秘的な岩の生成物などを見ることができる。

石灰岩で形成されたカルスト台地となっているこの地では、400〜600万年前、硫化水素を含んだ水が石灰岩の隙間や裂け目にしみ込み、浸食が始まった。やがてその水が雨水と混ざり合い、雨水に含まれた酸素と結合して硫酸に変化。この硫酸が長年かけて石灰岩を徐々に溶かしていった結果、今のような無数の鍾乳洞ができたと考えられている。現在残されている岩の生成物や鉱石などからは地球の地質学的な歴史過程を見ることができ、今も刻々と形を変えて成長し続ける世界でも貴重な洞窟として、各国の専門家の研究対象となっている。その希少性と鍾乳石の多様性、美しさなどから、1995年に世界自然遺産に登録された。

地球の未来をも支える地下の秘密とは

ナチュラル・エントランスは傾斜が急すぎるので、スイッチバック式のトレイルを下って行く ©︎Peter Jones

ビジターセンターのすぐ脇には、カールズバッド洞窟へと続くナチュラル・エントランスがある。約1.25マイル続く険しい坂を地下750フィートまで下りていく道だ。地上からの高低差は、およそ75階建の建物の高さに匹敵する。大小さまざまな空間が広がる洞窟内部で大きな見どころとなっているのが、「ビッグルーム」と呼ばれる空間。北アメリカでもっとも大きな洞窟空間で、高さは約260フィート、フットボール場が6面収まってしまうほどの広さがある。室内には多種多様なフォーメーションを見せる鍾乳石があり、その多様性は見る人を飽きさせない。見どころを余すところなく見学できるように1.25マイルのトレイルが整備されており、1時間半ほどで見て回ることができる。洞窟内はセルフで探検することも可能だが、より安全に詳しく細部まで見学したいなら、レンジャーがガイドしてくれるツアーに参加するのがおすすめ。

ちなみに、一般客の入場は禁止されているものの、研究者の間で注目の的となっているのがレチュギア洞窟。その深さは1604フィート、長さは分かっているだけでも145マイルあり、現在も調査が進められている。天井からシャンデリアのように垂れ下がった真っ白な美しい結晶の塊や、ストローのように無数に垂れ下がる細い線などさまざまな鍾乳石や鉱石が見られ、まだ解明されていない地質学的過程を観察できる“地下実験室”として注目されている。特に、洞窟群で確認されたバクテリアの生命力は、新薬の開発にも役立てられているのだとか。

まだまだ謎の多いカールズバッド洞窟群。これからの研究成果が楽しみだ。

レチュギア洞窟にあるシャンデリア・ボールルーム ©️ Gavin Newman

遺産プロフィール
カールズバッド洞窟群国立公園
Carlsbad Caverns National Park

登録年 1995年
遺産種別 世界自然遺産
www.nps.gov/cave/index.htm

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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